第1回家族インタビュー

(写真左から)向井 孝子様、美詠子様

向井 美詠子様 (向井 孝子様のお嬢様)

母が糖尿病であることを知ったのは、私が中学生の頃でした。母から聞いて知ったのですが、当時は糖尿病がどんな病気か全然理解していませんでした。母はインスリン注射を打つところを私たちに見せたことがありませんでしたし、とても元気で活動的な人でしたから、学校の保健の授業で糖尿病について学んでも、それが母の病気と同じものとはとても思えませんでした。

大学生になった頃に、糖尿病患者さんの会で、母の経験談の講演を聞きました。それで私は母が家族に黙って担ってきた長年の苦労や努力を初めて具体的に知り、本当に驚きました。

振り返ってみれば、母は外出時には必ずキャラメルを持ち歩いていましたし、私が食事の準備を手伝うようになってからも、母の分だけは母が自分でしていました。母は一緒に暮らしている家族にも頼ることなく、自分一人で糖尿病に向き合って生活していたのでした。それは、私たち子供が変に心配したり不安になったりすることがないようにとの心遣いだったのでしょう。

「リリーインスリン50年賞」が創設されると知って、当初、母は応募するのをためらっていました。母は自分が糖尿病であることは近しい家族にしか話しておらず、家族以外にはずっと隠してきていましたから。私は母から「リリーインスリン50年賞」の話を聞き、ぜひ応募するよう強く勧めました。母が50年という長い年月を糖尿病と共に苦労して生きてきたことを、ぜひ広く知って頂きたいと思いましたので。

私自身、今回の受賞を機に母に様々な話を聞くことができ、ようやく母の苦労と糖尿病について分かってきたような気がします。私の職場にも糖尿病の方がいて、先日昼食時に「インスリン治療を50年も続けてきた人がいるそうよ」と話が出たので、「それはうちの母のことなんですよ」と申し上げたら、とても驚いておられました。近年糖尿病にかかる人が急速に増え、糖尿病について新聞やTVで目にすることが増えてきました。そのような中で、50年前から、母が糖尿病と共に歩んできたという事実はとても貴重なことで、今回の受賞を機に母が糖尿病のことを公表したことを家族として大変誇らしく思っています。