第1回主治医インタビュー 2

第1回 「リリー インスリン50年賞」 受賞者 主治医インタビュー 2

書写病院 病院長
北村 嘉章 先生

書写病院 栄養科顧問
西村 登喜子 先生

第1回 「リリー インスリン50年賞」受賞
林 良春 様

書写病院 病院長 北村 嘉章 先生

私が初めて林さんを診察させていただいたのは、3年前の平成13年からです。林さんが12歳で1型糖尿病を発症されて、約50年にわたってインスリン治療をされてきたと伺い、大変驚きました。また、林さんが今までかかってこられた医師は、私の大先輩にあたる人々であることがわかり、今まで合併症もなく経過してこられた林さんの診療を、大先輩方から引き継ぐということに少々緊張を覚えました。

林さんが、これだけうまく糖尿病とつきあってこられた最大の理由は、やはりご自身を律することができるということだと思います。食べたい盛りの年頃で糖尿病を発症された訳ですが、その頃から、ご自分を制するようにされていたようです。お仕事柄、おつきあいの席も多いようですが、アルコールも最初の一杯だけと決めておられるようです。

糖尿病は長くつきあっていく病気です。何年間にもわたって、薬を服用し、定期的に検査を受け、日々の生活に気をつけるということに、疲れてしまうこともあります。先日も10年間インスリン療法をされていて、最近疲れてきたとおっしゃる方に林さんのお話をしましたら、「もう少しがんばってみます」と言って帰られました。

糖尿病の方が10人おられたら、あるいは100人おられたら、全ての方がそれぞれの違った糖尿病をお持ちで、それぞれの糖尿病とのつきあい方があると思います。が、そのような生活を50年間続けてこられ、そして元気にされている方がおられるという事実は、他の糖尿病の患者さんにとって、大きな励みになると確信しています。今後も糖尿病とのつきあいに悩んでおられる方には、林さんのお話をさせていただき、それぞれの患者さんご自身の糖尿病とのつきあい方の参考にしていただこうと思っています。

書写病院 栄養科顧問 西村 登喜子 先生

林さんがこちらの病院に来られるようになり、糖尿病教室に来られた林さんの奥様から夜間の低血糖がご心配だということをお聞きしました。林さんのお食事内容・量を確認したところ、もう少し増やした方が良いということがわかりました。適切な食事例を実際に目で見て、口で味わっていただくために、病院で毎月開いている糖尿病教室の昼食会にお誘いしました。お食事の量を調整するようになって、低血糖をおこすことが減ったそうです。

林さんは食べることがお好きだったのと、ご自分の病気にとって食事が重要だと考えられて、調理師学校に行って勉強されたそうです。食事の量を抑えるというのは大変難しいことですが、林さんは本当に強い意志で食事の管理をされてこられました。50年前に林さんが発症された当時は、成長期の1型糖尿病の子供にも厳しい食事制限をしていたようで、一番食べたい盛りに随分辛い思いをされたことと思います。この時期に、自己管理をしっかりと身につけられたのでしょう。

自己管理をきちんとされている一方で、林さんは猟や果樹園づくり等のご自分の趣味も存分に楽しんでおられます。こうした楽しみもお持ちだから、うまくストレスを発散しながら、自己管理もおできになるのでしょう。糖尿病と上手につきあっておられると思います。糖尿病教室の昼食会では、患者さんどうし色々お話をしながら食事をしていますが、50年という長い間インスリン注射を続けてこられた林さんが、お元気で生き生きとされている姿は、他の糖尿病患者さんにとって、本当に良い刺激になります。2型糖尿病の方にとって、生活習慣を変えることは大切なことですが、本当に難しいことでもあります。林さんの姿を励みに、少しずつでも変えていって頂けたらいいな、と思います。