インスリン導入ナビ

患者さんの血糖コントロール状態に応じたレジメン変更についてご紹介します。


監修医師:東邦大学医学部内科学講座
糖尿病・代謝・内分泌学分野
教授 弘世 貴久先生

1回注射:持効型製剤1回注射(BOT*)

*Basal supported oral therapy


基礎分泌を補充し、1日1回のため導入しやすいレジメンです。


POINT 1 持効型製剤を1日1回注射
POINT 2 注射回数が少なく、導入が容易
POINT 3 基礎分泌の補充により血糖値が安定しやすくなる
POINT 4 低血糖を起こしにくい
POINT 5 食後高血糖の改善は不十分

  • 罹病期間が比較的短く、経口血糖降下薬だけでは血糖値のベースラインが高い。
  • インスリン注射に対する抵抗感が大きく、頻回注射が困難。

47歳、男性、会社員
体重:75kg、BMI:26.1、家族歴:母親が高血圧、脳梗塞の既往有り
HbA1c 8.5%、GA 25.0%、空腹時血糖 150mg/dL、Ⅰ度高血圧(152/90mmHg)
38歳のとき2型糖尿病と診断。40歳まで食事療法、運動療法のみ、その後、SU薬、ビグアナイド薬を使用。43歳頃からHbA1cが8.0%を超えDPP-4阻害薬を使用し、一度は改善傾向であったが、再び上昇傾向。仕事が多忙で食事も不規則になりがちで、日中の注射は難しいと訴えている。

初回投与量
4~8単位から開始、3~4単位なら低血糖の心配は少ない
(注射時刻は朝食前又は就寝前のいずれでもよいが、毎日一定とする)

投与量の調整:外来受診時の空腹時血糖値とHbA1cを目安に調節(血糖測定はインスリン開始1~2か月後から開始)

食前空腹時血糖値 用量調節
≧130mg/dL 2単位ずつ増量。HbA1cが7%台になるまで増量していく
<130mg/dL、HbA1c7.0%未満 投与量は変更しない
<130mg/dL、HbA1c7.0%以上 インスリンレジメンの変更を検討

  • SU薬は現在の使用量の半量~最小用量を継続する。
  • BG薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬を使用していた場合は、そのまま継続する。
  • チアゾリジン薬は、塩分制限をしながら継続してもよい。
  • 食後高血糖がある場合、α-GI薬、グリニド薬を追加投与してもよい。
  • DPP-4阻害薬の追加投与は有効であるが、SU薬を十分に減量した上で投与する。

SU薬、BG薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、チアゾリジン薬、α-GI薬、グリニド薬はインスリン製剤との併用について「併用注意」等となっています。詳しくは各製品の製品添付文書を参照ください。

3回注射:超速効型3回注射(またはミックス50の3回注射)

食後高血糖の改善効果が優れ、食事時間の変動にも対応しやすいレジメンです。


POINT 1 毎食前に超速効型を1日3回注射
POINT 2 食後高血糖を改善
POINT 3 空腹時、夜間の低血糖を起こしにくい
POINT 4 食事時間の変動に対応しやすい
POINT 5 注射回数が多い

  • 罹病期間が比較的短く、空腹時高血糖に比べて食後高血糖の程度が強い。
  • 罹病期間が短く、糖毒性解除によるインスリン離脱を期待できる。
  • インスリン注射に対する抵抗感が比較的小さく、昼食時の注射が行える。

58歳、男性、自営業
体重:65kg、BMI:22.8、家族歴:父親、兄が2型糖尿病
HbA1c 9.2%、GA 27.0%、空腹時血糖 142mg/dL、身体所見異常なし
50歳のとき2型糖尿病と診断。治療には積極的で55歳までは食事療法、運動療法のみでコントロールできていた。その後親の介護が必要となり、運動の時間も取れずストレスも加わり、急速に血糖コントロールが悪化。BG薬、DPP-4阻害薬を使用するもHbA1cが高い状態が続いている。食事は1日3回とも自宅で食べるが、昼食の時間は遅れることがある。

初回投与量
各食直前2~3単位から開始(肥満がありインスリン抵抗性が強いと思われる人は4単位から開始してもよい)

投与量の調整:外来受診時の食前血糖値(または食後2時間値)を目安に調節


食前血糖値(食後2時間値) 用量調節
≧130mg/dL ( ≧180mg/dL) 毎食前投与量を1単位ずつ増量(6単位までは1週毎、それ以上は2週毎に増量)
HbA1cが7%台になるまで増量していく。その後は責任インスリン*別に調整
<130mg/dL(<180mg/dL) 投与量は変更しない
<70mg/dL(<100mg/dL)
または低血糖症状発現
責任インスリン*を1単位減量

*血糖測定前の直近に投与したインスリン(朝食前血糖値→前日夕食前投与、昼食前血糖値→朝食前投与、夕食前血糖値→昼食前投与)

  • α-GI薬、グリニド薬は中止する。
  • SU薬は、現在の使用量の半量~最小用量を継続する。
  • BG薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬は継続する。
  • チアゾリジン薬は、塩分制限をしながら継続してもよい。

SU薬、BG薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、チアゾリジン薬、α-GI薬、グリニド薬はインスリン製剤との併用について「併用注意」等となっています。詳しくは各製品の製品添付文書を参照ください。

2回注射:混合製剤2回注射

基礎分泌と食後高血糖をともに改善し、日中の注射が困難な場合に適したレジメンです。


POINT 1 朝食前・夕食前に混合製剤を1日2回注射
POINT 2 注射回数が少ない(昼食時に注射しなくてよい)
POINT 3 食後高血糖、空腹時高血糖をともに改善
POINT 4 ミックス50の場合、3回注射への治療強化が容易
POINT 5 注射間隔が変わると、高血糖や低血糖を起こすことがあるので注意が必要(特に夜間低血糖)
POINT 6 規則正しい食事・注射ができる患者さんに適するので、対象となる患者は少ない

  • 罹病期間が中程度で、空腹時・食後とも高血糖である。
  • 仕事などの都合のため、あるいは高齢・認知症により家族・介護者の介助が必要なため、昼食時の注射が困難。

73歳、女性、主婦
体重:55kg、BMI:24.0、家族歴:なし
HbA1c 9.0%、GA 27.0%、空腹時血糖 162mg/dL、単純網膜症、微量アルブミン尿(150mg/g Cre)
55歳のとき市の健診で高血糖と指摘されるも受診せず。64歳のときに眼科で単純網膜症が見つかりその後2型糖尿病と診断。食事療法、運動療法から開始し、その後BG薬、DPP-4阻害薬、さらにGLP-1受容体作動薬を使用。昨年転倒による足の外傷からの運動不足などから血糖コントロールが急速に悪化。低血糖に対する不安が強く、家族のいない日中には注射をしたくないと訴えている。

初回投与量
各朝・夕食直前2~3単位から開始(肥満がありインスリン抵抗性が強いと思われる人は4単位から開始してもよい)

投与量の調整:外来受診時の食前血糖値(または食後2時間値)を目安に調節


食前血糖値(食後2時間値) 用量調節
≧130mg/dL(≧180mg/dL) 責任インスリン*を1単位ずつ増量。
HbA1cが7%台になるまで増量していく
<130mg/dL(<180mg/dL) 投与量は変更しない
<70mg/dL(<100mg/dL)
または低血糖症状発現
責任インスリン*を1単位減量

*血糖測定前の直近に投与したインスリン(朝食前血糖値→前日夕食前投与、昼食・夕食前血糖値→朝食前投与)

  • SU薬は、現在の使用量の半量~最小用量を継続する。
  • BG薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬は継続する。
  • チアゾリジン薬は、塩分制限をしながら継続してもよい。
  • 昼食後~夕食前に高血糖がある場合には昼にグリニド薬を追加してもよい。

SU薬、BG薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、チアゾリジン薬、α-GI薬、グリニド薬はインスリン製剤との併用について「併用注意」等となっています。詳しくは各製品の製品添付文書を参照ください。

4回注射:超速効型3回注射+持効型製剤1回注射

内因性インスリン分泌を再現し、厳格な血糖コントロールが可能なレジメンです。


POINT 1 毎食前に超速効型を1日3回、持効型製剤を1日1回注射
POINT 2 内因性インスリン分泌を再現( 食後高血糖、空腹時高血糖をともに改善)
POINT 3 食事時間の変動に対応しやすい
POINT 4 注射回数が多い
POINT 5 低血糖に注意が必要

  • 罹病期間が長く、空腹時・食後とも高血糖で、他のレジメンではコントロール不良。
  • インスリン作用が高度に低下している場合(1型糖尿病、糖尿病合併妊婦、周術期、清涼飲料水ケトアシドーシス)。
  • 空腹時・食後とも高血糖だが、罹病期間が短く、糖毒性解除によるインスリン離脱を期待できる。
  • インスリン注射に対する抵抗感が小さく、昼食時の注射が行える。

65歳、男性、非常勤勤務
体重:60kg、BMI:20.8、家族歴:父親が2型糖尿病、高血圧
HbA1c 8.1%、GA 24.0%、空腹時血糖 153mg/dL、身体所見異常なし
49歳のとき2型糖尿病と診断。50歳代の時は仕事が忙しく、BG薬、グリニド薬を使用し、通院、治療中断を繰り返していた。61歳からはBG薬の増量と共にグリニド薬を中止し、DPP-4阻害薬を使用しているがコントロール不良。本人も定年退職を機に治療に専念することを決意し、インスリン治療も受け入れている。

初回投与量
体重×0.2単位/kg=1日総投与量として、朝:昼:夕:就寝前の比率1:1:1:1から開始
例:体重60kgの場合、毎食直前に超速効型3単位、就寝前に持効型3単位(1日約12単位)から開始

投与量の調整:外来受診時の食前血糖値(または食後2時間値)を目安に調節

食前血糖値(食後2時間値) 用量調節
朝食前空腹時≧130mg/dL 就寝前の持効型製剤を1単位ずつ増量。
HbA1cが7%台になるまで増量していく
≧130mg/dL(≧180mg/dL) 毎食前の超速効型製剤を1単位ずつ増量。
HbA1cが7%台になるまで増量していく
<130mg/dL(<180mg/dL) 投与量は変更しない
<70mg/dL(<100mg/dL)
または低血糖症状発現
責任インスリン*を1単位減量

*血糖測定前の直近に投与したインスリン(朝食前血糖値→前日夕食前投与、昼食前血糖値→朝食前投与、夕食前血糖値→昼食前投与)

  • α-GI薬、グリニド薬は中止する。
  • SU薬は現在の使用量の半量~最小用量を継続する。
  • BG薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬は継続する。
  • チアゾリジン薬は、塩分制限をしながら継続してもよい。

SU薬、BG薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、チアゾリジン薬、α-GI薬、グリニド薬はインスリン製剤との併用について「併用注意」等となっています。詳しくは各製品の製品添付文書を参照ください。

インスリン変更ナビ

患者さんの血糖コントロール状況に応じたレジメン変更についてご紹介します

監修医師:東邦大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌学分野
教授 弘世 貴久先生

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持効型+経口血糖降下薬(BOT)
ミックス25 2回投与(朝・夕食直前)
ミックス50 2回投与(朝・夕食直前)
超速効型 1回(朝食直前)+ 持効型1回投与
超速効型 3回投与(朝・昼・夕食直前)
超速効型 2回(朝・夕食直前)+ 持効型1回投与
ステップアップの種類を選択してください。
持効型+経口血糖降下薬(BOT)→超速効型を朝食直前(または夕食直前)に追加
超速効型1回(朝食直前もしくは夕食直前)+持効型1回投与→超速効型を夕食直前(または朝食直前)に追加
超速効型2回(朝・夕食直前)+持効型1回投与→超速効型を昼食直前に追加
現在お使いのレジメンを選択してください。
ミックス25 2回投与(朝・夕食直前)
ミックス50 2回投与(朝・夕食直前)
1日4回注射強化インスリン療法超速効型毎食直前3回投与+持効型

動画ライブラリ



※ 先生のご所属はコンテンツ制作時のものです。


患者背景別ヒューマログの正しい使い方妊娠中の患者さん

愛媛大学大学院医学系研究科
産科婦人科学講座
教授 杉山 隆先生

糖尿病の急性合併症について -DKA/HHSを中心に-

東京慈恵会医科大学附属柏病院
糖尿病・代謝・内分泌内科
准教授 藤本 啓先生

患者背景別ヒューマログの正しい使い方50代の2型糖尿病患者さん

さくら内科・糖尿病クリニック
院長 粟﨑 博先生

心血管疾患周術期の糖尿病管理インスリンの使い方を中心に

心臓病センター榊原病院
糖尿病内科部長 清水 一紀先生

患者背景別インスリンの正しい使い方1型糖尿病の患者さん

埼玉医科大学
内分泌・糖尿病内科
講師 及川 洋一先生

BOTから強化療法へのステップアップ


この動画のポイント

POINT1 糖尿病治療では、血管の保護とQOLの維持を念頭に、患者さんの人生設計の支援となる血糖コントロールを行うこと、Beyond the BG controlが重要です。

POINT2 BOTによって十分に血糖がコントロールできなくなった「BOTくずれ」の患者さんの例をみながら、食後高血糖改善のためのステップアップを考えます。

デバイス

インスリンを注入する際のデバイスにはプレフィルド(キット)型、カートリッジ型、バイアル型と3通りの製剤があります。


プレフィルド/キット製剤

あらかじめインスリン製剤が注入器にセットされている使い捨てタイプのデバイスです。カートリッジなどを交換する手間がなく、簡単な操作で使用できるため、利便性が高いのが特徴です。注射針は、JIST3226-2に準拠したA型専用注射針を使用します。

カートリッジ製剤

ペン型注入器に、インスリンの入った専用カートリッジをセットして使用するタイプです。カートリッジには種類があり、専用の注入器を使用しないと、過量投与などの事故につながる可能性があります。カートリッジのインスリンが空になったら、その都度カートリッジを交換します。注入器の注射針は、JIST3226-2に準拠したA型専用注射針を使用します。

バイアル製剤

バイアル製剤はインスリン専用シリンジ(注射器)で吸引して使います。主に医療機関で使用され、多くは皮下注射です。