1GLP-1受容体作動薬
「トルリシティ」の位置付け

インスリン非依存状態にある2型糖尿病患者さんの治療では、まずは、食事療法、運動療法、患者教育に取り組むことは、言うまでもありません。しかし、多くの患者さんはこれらの患者教育に加えて、薬物療法が必要となります。薬物療法は、ご承知の通り、まずは単剤から投与を開始します。

では、経口血糖降下薬を1~2剤投与しても、なかなか目標値を達成できない患者さんの次の一手には、どのような治療薬を選択していらっしゃるでしょうか。私は、トルリシティは、ここに位置付けられると考えます。つまり、経口血糖降下薬1~2剤では効果不十分な患者さんに、QOLを損なうことなく、今の治療を強化したい。トルリシティは、そのような患者さんに対する選択肢のひとつになり得るのではないでしょうか。

インスリン非依存状態の治療

日本糖尿病学会(編・著) 糖尿病治療ガイド2014-2015.文光堂.2014,p28

本コンテンツは2016年1月にm3に公開されたものを再掲しています。

2投与2週後から実感できる効果発現の速さ

トルリシティは、半減期が4.5日と長いことから、週1回の投与で血糖コントロールの改善が可能です。また、朝・昼・晩いつでも投与可能なこともメリットのひとつです。このような週1回の投与では、血糖コントロール改善の「速さ」は期待できないのではないかと思われる先生もいらっしゃるかもしれません。しかし、トルリシティは、日本人2型糖尿病患者さんを対象とした第II相臨床試験において、速やかな効果発現を示しています。

本試験では、食事・運動療法のみ、またはDPP-4阻害薬以外の経口血糖降下薬単独療法で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者さんを対象に、プラセボまたはトルリシティ0.75mgを週1回、12週間皮下投与し、空腹時血糖値変化量の推移を検討しています。その結果、トルリシティ群では2週後から、プラセボ群に比べ有意に空腹時血糖値が低下しました。

効果発現の速さ

トルリシティ群では2週後から、プラセボ群に比べ有意な空腹時血糖値の低下が示されました。

空腹時血糖値変化量の推移〔副次評価項目〕

対象
食事・運動療法のみ、またはDPP-4阻害薬以外の経口血糖降下薬単独療法を受けていた血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者72例
(被験薬投与開始1週間前のHbA1cが7.0%以上、9.5%以下)
方法
二重盲検下でプラセボまたはトルリシティ0.75mgを週1回、12週間皮下投与。経口血糖降下薬投与例は8週間ウォッシュアウトした後、いずれかの投与群に割り付けられた。
主要評価項目
12週後のHbA1c変化量
副次評価項目
HbA1c7.0%未満および6.5%以下達成率、空腹時血糖値、7ポイント血糖自己測定値、HOMA2-%B、HOMA2-%S、体重など
安全性
12週後の副作用発現率は、トルリシティ群14.3%(5/35例)、プラセボ群5.4%(2/37例)であった。
副作用の種類は、トルリシティ群では便秘および悪心が各5.7%、下痢、腹部不快感、腹部膨満、末梢冷感および末梢血管障害が各2.9%、プラセボ群では下痢および腹部不快感が各2.7%であった。
トルリシティ群における重篤な有害事象は1例、投与中止に至った有害事象は2例であった。
これらのうち1例は膵癌により死亡した(因果関係なし)。

Terauchi Y. et al. Endocr J. 2014; 61: 949
(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした
第Ⅱ相臨床試験(GBCZ試験)、承認時評価資料

3インスリングラルギンに比べ
HbA1cが有意に低下

さらに、トルリシティは、優れたHbA1c低下効果が認められています。日本人2型糖尿病患者さんを対象とした第III相臨床試験では、SU薬、ビグアナイド薬(単独または併用)で血糖コントロール不十分な患者さんを対象に、トルリシティ週1回またはインスリングラルギン1日1回を追加投与して比較検討されました。
その結果、26週後におけるベースラインからのHbA1c変化量の群間差は-0.54%(95%信頼区間:-0.67、-0.41)で、95%信頼区間の上限が0%未満であったため、インスリングラルギンに対するトルリシティの優越性が認められました。

優れたHbA1c低下効果

経口血糖降下薬(1~2剤)への追加投与(インスリングラルギン対照非劣性試験)

HbA1cの推移HbA1cの推移

対象
食事・運動療法とスルホニルウレア(SU)薬、ビグアナイド(BG)薬の単独または併用で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者361例
(被験薬投与開始4週間前のHbA1cが7.0%以上、10.0%以下)
方法
SU薬※1、BG薬※2の単独または併用下で、トルリシティ0.75mgを週1回またはインスリングラルギンを1日1回就寝前に26週間皮下投与。
インスリングラルギンは4~8単位から開始し、目標血糖値(空腹時血糖値70~110mg/dL)に合わせて用量を調節。
※1 :グリベンクラミド2.5~5mg/日、グリクラジド60~80mg/日、グリメピリド2~3mg/日
※2 :メトホルミン750~1500mg/日、 ブホルミン100~150mg/日
主要評価項目
26週後のHbA1c変化量
副次評価項目
HbA1c7.0%未満および6.5%以下達成率、空腹時血糖値、8ポイント血糖自己測定値、体重など
解析方法
26週後のHbA1c変化量の群間差(トルリシティ群-インスリングラルギン群)の最小二乗平均の95%信頼区間の上限が0.4%未満の場合にインスリングラルギンに対するトルリシティの非劣性が、同じく上限が0%未満の場合にインスリングラルギンに対するトルリシティの優越性が検証されるとした。
安全性
26週後の副作用発現率は、トルリシティ群29.8%(54/181例)、インスリングラルギン群2.2%(4/180例)であった。トルリシティ群の主な副作用(発現率2%以上)は、下痢8.3%、悪心7.7%、便秘6.6%、リパーゼ増加3.3%、嘔吐2.8%、食欲低下2.8%であった。インスリングラルギン群では便秘、糖尿病神経障害、異常感、注射部位内出血、末梢性浮腫が各1例に認められた。重篤な有害事象はトルリシティ群9例、インスリングラルギン群3例、投与中止に至った有害事象はトルリシティ群6例、インスリングラルギン群2例であった。死亡例の報告はなかった。

Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994
(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした
第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料

452週にわたるHbA1c低下効果の持続

このようなトルリシティのHbA1c低下効果は、52週と長期にわたり持続しました。

実際に、種々の経口血糖降下薬の単独投与で血糖コントロール不十分な患者さんに、トルリシティを週1回追加投与したところ、HbA1cの低下は52週後まで安定した推移を示しました。52週時点におけるベースラインからのHbA1c変化量は-1.57%から-1.69%でした。

HbA1c低下効果の持続

経口血糖降下薬の単独投与で血糖コントロール不十分な患者にトルリシティを週1回追加投与したところ、HbA1cが低下し、52週後まで安定した推移を示しました。

HbA1cの推移

対象
経口血糖降下薬(SU薬、BG薬、α-GI、チアゾリジン、グリニド)の単独療法で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者394例
(被験薬投与開始4週間前のHbA1cが7.0%以上、11.0%以下)
方法
試験開始前に服用していた経口血糖降下薬※1の併用下で、トルリシティ0.75mgを週1回、52週間皮下投与。
※1:BG薬、α-GI、チアゾリジンおよびグリニドは少なくとも添付文書で定められた通常用量、SU薬は少なくとも添付文書で定められた最大維持用量の半量
主要評価項目
安全性
副次評価項目
26週および52週後のHbA1c変化量、HbA1c7.0%未満達成率、空腹時血糖値、7ポイント血糖自己測定値、体重など
安全性
52週後の副作用発現率は34.5%(136/394例)で、併用薬別ではSU薬併用群44.3%(58/131例)、BG薬併用群23.0%(14/61例)、α-GI併用群32.3%(21/65例)、チアゾリジン併用群25.8%(17/66例)、グリニド併用群36.6%(26/71例)であった。
重篤な有害事象は19例、投与中止に至った有害事象は18例であった。死亡例の報告はなかった。

Emoto M, et al. Endocr J. 2015; 62: 1101
(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした
第Ⅲ相臨床試験(GBDQ試験)、承認時評価資料

5安全性

国内臨床試験における安全性評価対象917例中272例(29.7%)に副作用が認められました。主な副作用は、便秘6.2%、悪心6.1%、下痢5.8%でした。また、単独投与試験における悪心は、投与2日後までに5%程度みられましたが、その後は低下傾向でした。

トルリシティの投与を開始する際は、投与初期に悪心などの消化器症状が出ることがあるが、その後は速やかに減少していくことを伝え、安心感を持ってもらうことが、アドヒアランスの向上につながると考えます。

国内臨床試験における副作用発現割合

安全性評価対象917例中272例(29.7%)に副作用が認められ、主な副作用は、便秘57例(6.2%)、悪心56例(6.1%)、下痢53例(5.8%)でした。(承認時)

投与時期別の悪心の発現割合(単独投与)

社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした
第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料
本試験はイーライリリー社の支援により行われました。

6まとめ

監修:寺内 康夫先生
横浜市立大学大学院医学研究科
分子内分泌・糖尿病内科学 教授

週1回の投与で、速やかな血糖改善効果と、長期にわたるHbA1c低下効果を維持できるトルリシティは、経口血糖降下薬1~2剤では血糖コントロール目標値が達成できない患者さんの次の一手として位置付けられる選択肢のひとつです。有効性はもちろん、安全性やアドヒアランスにも配慮した治療選択肢として活用いただけるのではないでしょうか。

効能・効果、用法・用量、使用上の注意等は、添付文書をご参照ください。