Vol.1 ここで使う!-GLP-1受容体作動薬 トルリシティ導入のタイミング
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GLP-1受容体作動薬の守備範囲は広い。2型糖尿病治療の「初期段階」から使用可能。

DPP-4阻害薬は効果と使いやすさから、瞬く間に日本の2型糖尿病治療に根付き、多くの患者さんの初期治療に用いられるようになりました。一方でGLP-1受容体作動薬は、DPP-4阻害薬と同じインクレチン関連薬でありながら、注射剤であることが敷居を高くしてしまい、活用の場を見出されずに今日に至ってしまった感があります。
GLP-1受容体作動薬は初期治療からインスリンとの併用まで、守備範囲の広い薬剤です。インクレチン関連薬の作用機序から考えて、DPP-4阻害薬がインスリン分泌能の保たれた患者さんに適しているように、GLP-1受容体作動薬もまた、病態が進んでからではなく早期に導入することで実力を発揮します。
米国糖尿病学会/欧州糖尿病学会(ADA/EASD)のポジションステートメントでは、各種経口血糖降下薬と並び、第一選択薬のメトホルミンで目標未達の場合の追加薬として位置付けられています1)

例えば、1~2剤の経口血糖降下薬でHbA1c8%台。HbA1c7%未満を目指す「次の一手」に、トルリシティは有力な選択肢。本剤の速やかな効果発現、優れたHbA1c低下効果と患者さんの良好な受け入れが、治療強化をサポート。

とはいえ、理論的に「初期段階から使用可能」だとわかっても、日常診療でGLP-1受容体作動薬をどのタイミングで導入すべきか、迷われる先生もいらっしゃると思います。
表は、トルリシティの国内臨床試験の患者背景です。GBDY試験2,3)とGBDQ試験4,5)では、「経口血糖降下薬1~2剤でHbA1c8~9%」、「罹病期間は約6~9年」という患者群で有効性が検討されています。いずれの試験でも優れたHbA1c低下効果が示されていますが、1~2剤の経口血糖降下薬(ビグアナイド薬、SU薬)に本剤またはインスリングラルギンを追加したGBDY試験では、トルリシティ群でHbA1cが1.44%低下し、インスリングラルギンとの間に非劣性および優越性が認められました(図)。HbA1c7%未満達成率でみても、トルリシティ群71.3%、インスリングラルギン群45.8%と、両群間に有意差が示されています(p<0.001、Cochran-Mantel-Haenszel test)。また、空腹時血糖値と食後血糖値に関しても、トルリシティ群で有意な低下が示されています(それぞれp<0.05、p<0.001、ANCOVA)。

表 トルリシティの国内第Ⅲ相臨床試験の患者背景
  • a)Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994 (本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
  • b)社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料
  • c)Emoto M, et al. Endocr J. 2015; 62: 1101 (本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
  • d)社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDQ試験)、承認時評価資料
図 トルリシティのHbA1c低下効果(インスリングラルギン対照非劣性試験)
対象
食事・運動療法とスルホニルウレア(SU)薬、ビグアナイド(BG)薬の単独または併用で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者 361例
(被験薬投与開始4週間前のHbA1cが7.0%以上、10.0%以下)
方法
SU薬、BG薬の単独または併用下で、トルリシティ0.75mgを週1回またはインスリングラルギンを1日1回就寝前に26週間皮下投与。インスリングラルギンは4~8単位から開始し、目標血糖値(空腹時血糖値70~110mg/dL)に合わせて用量を調節。
主要評価項目
26週後のHbA1c変化量
副次評価項目
HbA1c7.0%未満および6.5%以下達成率、空腹時血糖値、8ポイント血糖自己測定値、体重など
解析方法
26週後のHbA1c変化量の群間差(トルリシティ群-インスリングラルギン群)の最小二乗平均の95%信頼区間の上限が0.4%未満の場合にインスリングラルギンに対するトルリシティの非劣性が、同じく上限が0%未満の場合にインスリングラルギンに対するトルリシティの優越性が検証されるとした。
安全性
26週後の副作用発現率は、トルリシティ群29.8%(54/181例)、インスリングラルギン群2.2%(4/180例)であった。トルリシティ群の主な副作用(発現率2%以上)は、下痢8.3%、悪心7.7%、便秘6.6%、リパーゼ増加3.3%、嘔吐2.8%、食欲低下2.8%であった。インスリングラルギン群では便秘、糖尿病神経障害、異常感、注射部位内出血、末梢性浮腫が各1例に認められた。低血糖症(症候性低血糖症または血糖値が70mg/dL以下)の発現割合は、トルリシティ群26.0%(47/181例)、インスリングラルギン群47.8%(86/180例)であった。また、夜間低血糖症はトルリシティ群8.8%(16/181例)、インスリングラルギン群26.7%(48/180例)にみられた。両群とも第三者の手助けを必要とした低血糖症は認められなかった。重篤な有害事象はトルリシティ群9例、インスリングラルギン群3例、投与中止に至った有害事象はトルリシティ群6例、インスリングラルギン群2例であった。死亡例の報告はなかった。

Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994
(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料

こうした成績を念頭に、まずは、1~2剤の経口血糖降下薬で、HbA1c8%台が長く続いている患者さんや、コントロールが悪化してHbA1cが8%を超えたときに、治療強化の選択肢としてトルリシティを検討していただきたいと思います。特に、年齢が40~60歳台の比較的若い患者さんでは、合併症の抑制に向けて、HbA1c8%台で踏みとどまらず、血糖低下効果の高い薬剤で積極的に7%未満を目指すべきでしょう。しかし、働く世代の患者さんは、日常の忙しさが治療の障壁になることも少なくありません。体重増加を気にしつつも食事・運動療法を思うように実行できなかったり、日中の服薬が難しかったりなど、理由はさまざまです。
トルリシティの投与は週1回で、投与を忘れても次の投与まで3日(72時間)以上あれば投与が可能なので、薬の飲み忘れが懸念される患者さんでもアドヒアランスの向上が期待できます。また、専用ペン「アテオス」は針の取り付けや薬剤の混和、空打ちが不要で、3ステップの簡単な操作で投与できます。実際、自己注射の経験がない2型糖尿病患者さんを対象とした調査で、トルリシティのプロファイルは受け入れが良好であることが示唆されています6)

治療強化の遅れは、長期的な血糖コントロールにも影響。トルリシティという新たな選択肢で、早期の治療強化を。

ADA/EASDのポジションステートメントでは、約3ヵ月間でHbA1cが目標未達の場合は治療強化が勧められています。しかし、英国の大規模なコホート研究では、HbA1cが8%以上の患者さんに2剤目から3剤目の経口血糖降下薬が追加されるまで、3剤目の経口血糖降下薬からインスリン導入までに、それぞれ6年を超える期間(中央値)がかかっていることが明らかにされ、必ずしも適切なタイミングで治療強化がなされていない現実が浮き彫りにされました7)
一方、米国の研究では、HbA1cが7%を超えてから早期(6ヵ月以内)に治療強化を行った患者さんでは、治療強化が遅れた患者さんより、5年間の血糖コントロールが有意に良好(p=0.0060、Cox回帰モデル)であることが報告されています8)
トルリシティという新たな一手で、早期のHbA1c7%未満達成を目指していただきたいと思います。

  • 1) Inzucchi SE, et al. Diabetes Care. 2015; 38: 140
  • 2) Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994 (本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
  • 3) 社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料
  • 4) Emoto M, et al. Endocr J. 2015; 62: 1101 (本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
  • 5) 社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDQ試験)、承認時評価資料
  • 6) Gelhorn HL, et al. Patient Prefer Adherence. 2016; 10: 1337 (本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
  • 7) Pantalone KM, et al. Diabetes Care. 2016; 39: 1527
  • 8) Khunti K, et al. Diabetes Care. 2013; 36: 3411

効能・効果、用法・用量、使用上の注意等は、添付文書をご参照ください。

添付文書