Vol.2 注射のハードルを越える 患者さんの気持ちに寄り添うアプローチ
  • Expert's voice ①
  • Expert's voice ②
  • Expert's voice ③
  • Expert's voice ④
  • Expert's voice ⑤
トルリシティの導入は1回で受け入れてもらおうとせず、患者さんを励ましながら、気持ちが前向きに動いたときにアプローチ。

当クリニックでは、ご高齢で低血糖が懸念される方を除き、できるだけ多くの患者さんのHbA1cを7%未満に導きたいという気持ちで治療にあたっています。患者さんにも「7%を切ることを目標にできるといいですね」とお話ししています。とはいえ、目標達成を真剣に迫りすぎると、患者さんはプレッシャーを感じて疲れてしまいます。ですから、さらりとした口調で、くどくならない程度に繰り返し話をし、その過程で治療強化の提案をしています。
例えば、複数の経口血糖降下薬を併用してもコントロールが難しくなってきた患者さんには、「もう一度、7%未満に戻れるように、一緒に頑張りましょう」と励ましながら、「HbA1cを下げる効果が高くて、週1回だけ使うお薬がありますよ」といったように、トルリシティを紹介します。
しかし、1回の説明で導入が受け入れられるとは限りません。それでも、折りにふれ話題にのせていくうちに、患者さんが「おっ」という顔をされることがあります。これは、患者さんの気持ちが前向きに動いている印。このタイミングでもう一度アプローチすると、「始めてみます」の一言につながることを多数経験しています。トルリシティの導入は、1回で受け入れてもらおうとせず、患者さんの気持ちの変化に寄り添いながら持ちかけていくことが成功のポイントだと思います。
また、初診でHbA1cがかなり高い患者さんなどの場合は、経口血糖降下薬1剤で7%未満を達成するのは難しく、いずれ薬剤を増やすことになると最初にお伝えしています。こうした患者さんの中には、「薬を何種類も飲まなくてはいけないのなら、週1回の注射のほうがよい」と早い段階からトルリシティを希望する方もいらっしゃいます。

「注射」というハードルを越えるには、アテオス練習用見本を使った実演が効果的。否定的な反応がみられても、血糖値が下がらないことが気になると、患者さんの気持ちが変わってくる。

トルリシティの専用ペン「アテオス」を初めて知ったとき、操作の簡単さに驚きました。そして日常診療でも、アテオスは患者さんが注射というハードルを越える大きなきっかけとなっています。
私は最初にトルリシティを紹介するとき、冗談まじりに「秘密兵器の出番だな」と切り出すことがあります。けれども「注射なんですよ」と続けると、患者さんから「注射ですか・・・」というため息がもれてきます。そこで、アテオスと同じ仕様で作られた操作練習用見本(デモペン)を使って、「キャップを外して、お腹にあて、注入ボタンを押す」という一連の操作を、患者さんの前で実演します。すると、多くの患者さんは「えっ、それだけ?」という表情をなさいます。こうした患者さんには導入に向けて、使い方だけでなく効果や副作用などの説明を進めていきます。
一方で、注射というだけで嫌がる方、デモペンによる実演を見せても否定的な反応をなさる方もいらっしゃるのは事実です。こんなときは無理強いをせず、一旦、説明を終了します。しかし、血糖コントロールが改善しないまま数ヵ月が過ぎると、「先生が前に見せてくれた注射、やはり使ったほうがよいのでしょうか?」と患者さんのほうから尋ねられることがあります。こういうときの患者さんは前向きですから、「試してみる価値がありますよ」と軽く背中を押しつつ、改めてトルリシティの導入を提案します。

薬の飲み忘れの原因を探りつつ、「週1回」というオプションを提示。朝昼晩いつでも投与できること、忘れても次の投与日まで3日以上あれば投与できることも、患者さんの気持ちを楽にする。

近年、「残薬」が問題になっています。しかし、患者さんとの間では、「飲み忘れ=悪いこと」という図式でコミュニケーションをしても状況は好転しないと感じています。私の場合、「飲み忘れがあっても当然」というスタンスで接し、むしろその原因を探ることに重きをおいています。そして、患者さんと一緒に原因を探る中で、週1回のトルリシティを選択肢として提案しています。
また、トルリシティは週1回投与であると同時に、食事のタイミングに関係なく朝・昼・晩いつでも投与可能なことも良好なアドヒアランスにつながっています。さらに、投与を忘れたときでも、次の投与日までに3日以上あればすぐに投与できる(図)ということをお話しすると、患者さんは気持ちが楽になるようです。
なお、できれば投与頻度と同時に、トルリシティの作用は1週間続くこと、8日目からいきなり作用しなくなるわけではないことを説明するとよいでしょう。特に真面目な患者さんの中には、「決められた曜日にきちんと投与しなければいけない」という必要以上のプレッシャーを感じる方もいらっしゃるので、「効果の持続」を理解していただくことが大切です。

図 トルリシティの投与を忘れたときの対応
「注射=インスリン」の誤解を解くことも大切。

「先生、注射ということはインスリンですか?」—トルリシティの導入を提案したときによく尋ねられる質問です。患者さんの中には「注射といえばインスリン」、「インスリンは糖尿病治療のなれの果て」と思っている方も少なくありません。誤ったイメージですが、頭ごなしに否定しても納得してもらうのは難しいものです。まずはインスリンの良し悪しを話題にせず、「トルリシティはインスリンではなく、インスリンを出すのを助ける注射。インスリンは毎日打つけれど、この薬は週1回」と話します。また、DPP-4阻害薬を服用している患者さんには、「今、飲んでいる薬の作用を強くした薬」だと説明しています。
注射に対して強い抵抗を示していたけれどもトルリシティが受け入れられ、その後さらにインスリンが必要になったときに、スムースにインスリン導入ができたという症例も経験しています。

HbA1c8%以上が半年以上続いたら、トルリシティを選択肢として検討してみる。

トルリシティの利点は週1回の投与や操作の簡便さだけでなく、優れた血糖低下効果を持つことです。私は効果の高さを活かして、経口血糖降下薬の併用例を中心に、最近は薬物療法の開始時にもトルリシティを使用していますが、これから使用をお考えの先生には、「HbA1c8%以上が半年以上続いていて、次の一手を悩んだ時」が導入を検討する1つの機会になると思います。勿論、患者さんの状態によっては速やかな専門医への紹介が必要です。しかし、患者さんにとって通い慣れたクリニックで適切な治療強化を図り、HbA1cを目標値に近づけることができれば、より良い医師・患者関係構築にもつながると考えています。

効能・効果、用法・用量、使用上の注意等は、添付文書をご参照ください。

添付文書