ブドウ糖濃度依存性にインスリン分泌を促進して血糖値を
低下させるインクレチン関連薬のひとつ

Q.1 GLP-1受容体作動薬はどのような薬剤なのでしょうか
GLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬と同様にインクレチン関連薬に分類される薬剤です。インクレチンは、インスリン分泌をブドウ糖濃度依存性に増強させる消化管ホルモンの総称です。このインクレチンのひとつにグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)があります。GLP-1は食事による脂質や糖質の刺激により、小腸下部から大腸にかけて存在するL細胞から速やかに血中に分泌され、膵β細胞膜上に発現するGLP-1受容体に結合し、ブドウ糖濃度依存性にインスリン分泌を促進して血糖値を低下させます。また、GLP-1は血糖値が高い場合には膵α細胞により産生されるグルカゴンの分泌を抑制することも知られています。

薬物療法の最初の選択肢、または治療強化のために
追加するという位置付けで、海外でも
血糖低下効果が高い薬剤として評価されています

Q.2 糖尿病治療におけるGLP-1受容体作動薬の位置付けについて教えてください

GLP-1受容体作動薬はその作用機序から、インスリン分泌が保たれている症例に有効な薬剤です。
日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド2014-2015」には、インスリン非依存状態にある慢性高血糖を呈す患者さんにとってGLP-1受容体作動薬は、経口血糖降下薬と並び、薬物療法の最初の選択肢になり得ると位置付けられています。また、食事・運動療法で血糖コントロール目標が達成できない場合や、第一選択薬では目標を達成できない場合に治療を強化する際の選択肢としても記載されています(図1)。

図1 「糖尿病治療ガイド2014-2015」におけるGLP-1受容体作動薬の位置付け

日本糖尿病学会 (編・著). 糖尿病治療ガイド2014-2015, 文光堂, 2014,p28

本コンテンツは2016年4月にm3に公開されたものを再掲しています。

糖尿病の合併症の予防という観点からは、
HbA1c値7.0%未満を達成することが目標となります

Q.3 糖尿病治療におけるHbA1c値の捉え方について教えてください

「糖尿病治療ガイド2014-2015」では、血糖コントロール目標として3つのHbA1c目標値(6.0%未満、7.0%未満、8.0%未満)が示されています。低血糖などの副作用なく達成可能であれば6.0%未満を達成して血糖正常化を目指すのが理想ではありますが、合併症予防のためには、まず7.0%未満を実現することが求められます。一方、8.0%未満を目標とするのは治療の強化が困難な場合です。実際に、2型糖尿病患者さんを約10年という長期にわたって追跡し、HbA1c値と糖尿病合併症、糖尿病関連死、全死亡のリスクとの関係を検討したUKPDS35試験によれば、HbA1cが6%台まで下げられた患者さんでは、7%台にとどまった患者さんと比べて、これらの発生率が少なかったことが示されています(図2)。

図2 HbA1c7.0%未満達成の意義

HbA1cと糖尿病関連エンドポイント発生率(UKPDS35、海外データ)

対 象
UKPDSの登録患者のうち、従来療法群またはSU薬・インスリンによる強化療法群に割り付けられた症例
方 法
診断時年齢50~54歳、追跡期間7.5~12.5年の白人男性(4,585例)のイベント発生率(/1,000人・年)をポアソン回帰分析を用いて解析した。

※糖尿病関連エンドポイント:突然死、高血糖あるいは低血糖による死亡、心筋梗塞、狭心症、心不全、脳卒中、腎不全、足切断(1指以上)、硝子体出血、網膜光凝固、失明、白内障手術

Stratton IM, et al. BMJ 2000;321:405より作図

トルリシティにより71.3%の症例がHbA1c7.0%未満を達成

Q.4 GLP-1受容体作動薬トルリシティの臨床効果について教えてください

トルリシティは、日本人2型糖尿病患者さんを対象とした第III相臨床試験で優れたHbA1c低下効果が示されています。
SU薬、ビグアナイド薬の単独または併用で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者さん361例を対象に、トルリシティ週1回またはインスリングラルギン1日1回を追加投与して比較検討したところ、26週後におけるベースラインからのHbA1c変化量の群間差は-0.54%(95%信頼区間:-0.67、-0.41)で、95%信頼区間の上限が0未満であったため、インスリングラルギンに対するトルリシティの優越性が認められ、HbA1c7.0%未満達成率はトルリシティ群で71.3%、インスリングラルギン群で45.8%という結果でした(図3)。
なお、トルリシティ群の主な副作用は、下痢8.3%、悪心7.7%、便秘6.6%、リパーゼ増加3.3%、嘔吐2.8%、食欲低下2.8%でした。

図3 経口血糖降下薬(1~2剤)への追加投与(インスリングラルギン対照非劣性試験)

HbA1c目標達成率(26週後)〔副次評価項目〕

Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料

対 象
食事・運動療法とスルホニルウレア(SU)薬、ビグアナイド(BG)薬の単独または併用で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者361例
(被験薬投与開始4週間前のHbA1cが7.0%以上、10.0%以下)
方 法
SU薬、BG薬の単独または併用下で、トルリシティ0.75mgを週1回またはインスリングラルギンを1日1回就寝前に26週間皮下投与。インスリングラルギンは4~8単位から開始 し、目標血糖値(空腹時血糖値70~110mg/dL)に合わせて用量を調節
主要評価項目
26週後のHbA1c変化量
副次評価項目
HbA1c7.0%未満および6.5%以下達成率、空腹時血糖値、8ポイント血糖自己測定値、体重など
解析方法
26週後のHbA1c変化量の群間差(トルリシティ群-インスリングラルギン群)の最小二乗平均の95%信頼区間の上限が0.4%未満の場合にインスリングラルギンに対するトルリシティの非劣性が、同じく上限が0%未満の場合にインスリングラルギンに対するトルリシティの優越性が検証されるとした。
安全性
26週後の副作用発現率は、トルリシティ群29.8%(54/181例)、インスリングラルギン群2.2%(4/180例)であった。トルリシティ群の主な副作用(発現率2%以上)は、下痢8.3%、悪心7.7%、便秘6.6%、リパーゼ増加3.3%、嘔吐2.8%、食欲低下2.8%であった。インスリングラルギン群では便秘、糖尿病神経障害、異常感、注射部位内出血、末梢性浮腫が各1例に認められた。重篤な有害事象はトルリシティ群9例、インスリングラルギン群3例、投与中止に至った有害事象はトルリシティ群6例、インスリングラルギン群2例であった。死亡例の報告はなかった。

食事・運動療法や経口血糖降下薬で血糖コントロール目標が
達成できない場合に、最初の薬物療法として有用な選択肢に

Q.5 最後に、先生がお考えになるGLP-1受容体作動薬の位置づけを教えてください
このような有効性、安全性の特徴をもつトルリシティは、内因性インスリン分泌が保たれている2型糖尿病患者さんで、食事・運動療法や経口血糖降下薬で血糖コントロール目標が達成できない場合に最初の薬物療法として選択肢のひとつになるのではないでしょうか。特に、将来の合併症リスクを考えると、週1回のトルリシティは、治療早期から導入することで、糖尿病治療において重要な役割を担うことが期待されます。糖尿病治療の基本は食事療法・運動療法であることには変わりありませんが、経口血糖降下薬1~2剤では目標が達成できない患者さんの治療を強化する次の一手として、週1回簡単に投与できるトルリシティは1つのオプションとなるでしょう。実際に、当院の症例でも、患者さんの受け入れ、アドヒアランスが非常によく、良好な血糖コントロールが維持できています。
糖尿病診療を進めていく上で、生活の質QOLをなるべく低下させない食事療法、運動療法、薬物療法を患者さんと一緒に考えていくことが大切です。その実現のために、トルリシティは有用な選択肢になり得ると考えています。

効能・効果、用法・用量、使用上の注意等は、添付文書をご参照ください。

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