ADAとEASDのポジションステートメントで、
GLP-1受容体作動薬はメトホルミンなどと同様に
血糖低下効果が高い薬剤と評価されています。

Q.1 糖尿病治療におけるGLP-1受容体作動薬の位置付けについて教えてください

海外においては、2015年に改訂されたADA(米国糖尿病学会)とEASD(欧州糖尿病学会)によるポジションステートメントで、GLP-1受容体作動薬はメトホルミンなどと同様に血糖低下効果が高い薬剤と評価されています。第一選択薬のメトホルミンを3ヵ月間投与してもHbA1cが目標に達しない場合の2剤併用療法や、その後の3剤併用療法の選択肢とされています(図1)。

図1 ADA/EASDによる糖尿病治療のポジションステートメントにおけるGLP-1受容体作動薬の位置付け

TZD:チアゾリジン DPP-4i:DPP-4阻害薬 SGLT2i:SGLT2阻害薬 GLP-1RA:GLP-1受容体作動薬

Inzucchi SE. et al. Diabetes Care 2015;38:140,Inzucchi SE. et al. Diabetologia 2015;58:429より作成

経口血糖降下薬の種類が増えるとともに、
経口薬の多剤併用が増えてきています

Q.2 昨今の経口血糖降下薬の併用状況について教えてください

近年、DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬など、新たな作用機序をもつ経口血糖降下薬が次々と上市され、糖尿病治療の選択肢が広がっています。その一方で、経口薬を2~3剤併用している症例が増えてきています図2)。経口血糖降下薬で治療中の糖尿病患者さんを対象とした試験(Paes AH et al.:Diabetes Care.1997;20(10):1512-7)では、1日の服薬回数が多いほど服薬アドヒアランスが低かったという結果が報告されています。実臨床の経験からも、糖尿病患者さんは高血圧や脂質異常症などの他の疾患に対しても投薬が行われていることが多く、現在以上に薬が増えることを嫌がる方もいらっしゃいます。患者さん中心の医療を実現するためにも、服薬回数や手間なども考慮した薬剤選択が望まれます

図2 JDDM研究登録患者の経口血糖降下薬の併用薬剤数(JDDM32)

経口血糖降下薬の種類が増えたことにより、多剤併用例が増加

JDDM研究(Japan Diabetes Clinical Data Management study)
糖尿病治療の実態の把握と改善を目的とした多施設共同研究。

Oishi M, et al. J Diabetes Invest 2014; 5: 581より作図

トルリシティはシタグリプチンと比較して、
有意にHbA1cを低下させました。

Q.3 トルリシティの有効性について教えてください

「トルリシティと同じインクレチン関連薬であるDPP-4阻害薬シタグリプチンとの有効性と安全性を比較した二重盲検ランダム化第Ⅲ相試験AWARD-5の結果をご紹介します。これは12カ国111施設から1098例の2型糖尿病患者さんを集めて行った多施設試験で、2年間という長期にわたり前向きにフォローするというデザインでした。食事・運動療法に加えてメトホルミンの併用下で、デュラグルチド0.75mgを週に1回、もしくはシタグリプチン100mgを1日1回投与したところ、ベースラインからのHbA1c変化量は、52週時ではデュラグルチド群で-0.87 %、シタグリプチン群で-0.39%、104週時にはデュラグルチド群で-0.71 %、シタグリプチン群で-0.32%と、いずれもデュラグルチド群でシタグリプチン群に比して有意な低下が認められました図3)。
当科においても、経口血糖降下薬1~2剤でも目標が達成できない患者さんは、トルリシティへの切り替えを選択肢の1つとして考えています。

図3 AWARD-5(シタグリプチン対照非劣性試験、海外データ)

HbA1cの推移

対 象
食事・運動療法のみ、または経口血糖降下薬で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者1098例
方 法
試験開始前に服用していた経口血糖降下薬を中止し、メトホルミン(1,500mg/日以上)を6週間以上投与。トルリシティ0.75mg・週1回、同1.5mg・週1回、シタグリプチン100mg・1日1回およびプラセボの4群に無作為に割り付け、メトホルミン併用下で104週間投与した。プラセボ群は、26週以降、シタグリプチン100mg・1日1回の投与に切り替えた。
主要評価項目
52週後のHbA1c変化量
副次評価項目
HbA1c7.0%未満および6.5% 以下達成率、空腹時血糖値、体重など
解析方法
主要評価項目について、シタグリプチンに対するトルリシティ1.5mgの非劣性を検証した(主要目的)。また、シタグリプチンに対するトルリシティ1.5mgの優越性、トルリシティ0.75mgの非劣性と優越性を検証した(副次的目的)。非劣性マージンは0.25%とした。
安全性
52週後の有害事象発現率は、トルリシティ0.75mg群77%(231/302例)、シタグリプチン群※70%(219/315例)であった。主な有害事象は、トルリシティ0.75mg群では悪心14%、鼻咽頭炎12%、下痢10%など、シタグリプチン群※では高血糖9%、頭痛7%、悪心5%などであった。重篤な有害事象の発現率は、トルリシティ0.75mg群、シタグリプチン群※ともに5%、投与中止に至った有害事象の発現率はそれぞれ8%、10%であった。シタグリプチン群※で2例の死亡が報告された。

※試験開始時から104週間シタグリプチンを投与された症例(26週までプラセボを投与されていた症例は含まれない)

国内で承認された用法・用量の成績のみをご紹介しています

Nauck M, et al. Diabetes Care 2014;37:2149より改変(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)


●用法・用量
通常、成人には、デュラグルチド(遺伝子組換え)として、0.75mgを週に1回、皮下注射する。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
本剤は週1回投与する薬剤であり、同一曜日に投与させること。

患者さんには前もって消化器症状が発現する可能性や、
症状は徐々に軽減することが多いことを
説明しておくことをお勧めします。

Q.4 トルリシティの副作用について教えてください

GLP-1受容体作動薬に特徴的な副作用として、下痢、便秘、嘔気などの胃腸障害があります。これには胃内容排出遅延、食欲や食事摂食量の抑制、結腸運動亢進といったGLP-1の生理作用が関与していると考えられています。トルリシティの国内臨床試験の集計では、安全性評価対象例917例中272例、29.7%に副作用が認められ、主な副作用は便秘57例(6.2%)、悪心56例(6.1%)、下痢53例(5.8%)などの消化器症状でした(図4)。悪心については、臨床試験では投与開始から2週間の発現が最も多く、その後は減少する傾向があります。また、悪心の持続期間の中央値は2.0日、嘔吐は1.0日でした。このことから、患者さんには前もって消化器症状が発現する可能性や、症状は徐々に軽減することが多いことを説明しておくことをお勧めします。
また、低血糖については、GLP-1受容体作動薬はブドウ糖濃度に依存して作用するため、単独投与でのリスクは低いとされています。しかし、スルホニルウレア(SU)薬やグリニド、インスリン製剤との併用では単独投与よりも低血糖の発現頻度が高まる可能性があるので注意が必要です。

図4 国内臨床試験における副作用発現割合

安全性評価対象917例中272例(29.7%)に副作用が認められ、
主な副作用は、便秘57例(6.2%)、悪心56例(6.1%)、下痢53例(5.8%)でした。(承認時)

胃腸症状

投与時期別の悪心の発現割合(単独投与)

社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)

経口血糖降下薬1~2剤では目標が達成できない患者さんの
治療を強化する次の一手として、週1回簡単に投与できる
トルリシティは1つのオプションとなるでしょう。

Q.5 トルリシティはどのように活用すればよいでしょうか?
まず内因性インスリン分泌能が保たれている2型糖尿病患者さんであることを確認する必要があります。その上で、比較的若くて罹病期間が長くなく、重症ではない患者さんにおいて、特に治療への意欲は高いものの、忙しくて治療に十分取り組めていないような方や、薬をつい飲み忘れてしまいがちな方、思ったように血糖値が下がらず、治療へのモチベーションが低下してしまっているような方に、トルリシティは最初の薬物療法としての候補になり得ます
糖尿病治療の基本は食事・運動療法であることには変わりありませんが、経口血糖降下薬1~2剤では目標が達成できない患者さんの治療を強化する次の一手として、週1回簡単に投与できるトルリシティは1つのオプションとなるでしょう。実際に、当院の症例でも、患者さんの受け入れ、アドヒアランスが非常によく、良好な血糖コントロールが維持できています。
患者さん本位の2型糖尿病治療をサポートする手段として、トルリシティはより良い治療選択肢になり得ると考えています。

効能・効果、用法・用量、使用上の注意等は、添付文書をご参照ください。

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