1トルリシティ国内第Ⅲ相臨床試験での患者背景

トルリシティの好適例を検討する上で、まず確認しておきたいのは、国内第Ⅲ相臨床試験の患者背景です。トルリシティと経口血糖降下薬1~2剤を併用した試験の患者背景は、平均年齢は約53~59歳、平均罹病期間は約6~9年で、平均HbA1cは約8.1~8.9%でした。また、トルリシティを単独で投与した試験の被験者も平均年齢は57.2歳、平均罹病期間は6.8年、平均HbA1cは8.2%と、同様の背景を持たれている方々でした。すなわち、トルリシティの国内第Ⅲ相臨床試験での患者背景は比較的若い方で、罹病期間はあまり長くなく、重症でもない患者さんでした。

2トルリシティ週1回投与による優れた血糖低下効果

では、このような患者さんにおけるトルリシティの有効性と安全性はどうでしょうか。プラセボ・リラグルチド対照単独療法第Ⅲ相試験の結果を見てみましょう。食事・運動療法のみ、またはチアゾリジン薬以外の経口血糖降下薬の単独療法で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者さん487例が対象です。試験開始8週前に経口薬を中止しウォッシュアウトした後に、トルリシティを週1回、単独投与しました。

試験デザイン

プラセボ・リラグルチド対照単独療法第Ⅲ相試験(H9X-JE-GBDP試験)

Miyagawa J,et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 974(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料

HbA1cの推移(主要評価期間)

主要評価期間である投与26週後のHbA1c変化量をみると、トルリシティ群はベースラインから1.43%低下し、投与4週後からプラセボ群と比較して有意な改善が得られました。

プラセボ・リラグルチド対照単独療法第Ⅲ相試験(H9X-JE-GBDP試験)

対象
食事・運動療法のみ、またはチアゾリジン以外の経口血糖降下薬単独療法を受けていた血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者487例(被験薬投与開始1週間前のHbA1cが7.0%以上、10.0%以下)
方法
二重盲検下でブラセボまたはトルリシティ0.75mgを週1回、非盲検下でリラグルチドを1週目0.3mg、2週目0.6mg、3週目以降0.9mg、1日1回、52週間皮下投与した。ブラセボ群は26週以降、トルリシティ0.75mgに切り替え、週1回皮下投与した。なお、経口血糖降下薬投与例は8週間ウォッシュアウトした後に、いずれかの投与群に割り付けられた。
主要評価項目
26週後のHbA1c変化量
副次評価項目
52週後のHbA1c変化量、HbA1c7.0%未満および6.5%以下達成率、空腹時血糖値、7ポイント血糖自己測定値、HOMA2-%B、HOMA2-%S、体重など
安全性
26週後の副作用発現率は、トルリシティ群20.4%(57/280例)、プラセボ群8.6%(6/70例)であった。トルリシティ群の主な副作用(発現率2%以上)は、便秘5.4%、悪心4.3%、下痢3.9%、腹部不快感3.2%であった。プラセボ群では便秘、悪心、腹部不快感、消化不良、リパーゼ増加、頭痛、口渇が各1例に認められた。重篤な有害事象はトルリシティ群3例、プラセボ群2例、投与中止に至った有害事象はトルリシティ群3例に認められた。死亡例の報告はなかった。

Miyagawa J,et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 974(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料

HbA1c7.0%未満達成率(26週後)〔副次評価項目〕

このときのHbA1c7.0%未満達成率は、トルリシティ群で71.4%、プラセボ群で5.9%となり、トルリシティ群で有意に高い達成率となりました。

プラセボ・リラグルチド対照単独療法第Ⅲ相試験(H9X-JE-GBDP試験)

対象
食事・運動療法のみ、またはチアゾリジン以外の経口血糖降下薬単独療法を受けていた血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者487例(被験薬投与開始1週間前のHbA1cが7.0%以上、10.0%以下)
方法
二重盲検下でブラセボまたはトルリシティ0.75mgを週1回、非盲検下でリラグルチドを1週目0.3mg、2週目0.6mg、3週目以降0.9mg、1日1回、52週間皮下投与した。ブラセボ群は26週以降、トルリシティ0.75mgに切り替え、週1回皮下投与した。なお、経口血糖降下薬投与例は8週間ウォッシュアウトした後に、いずれかの投与群に割り付けられた。
主要評価項目
26週後のHbA1c変化量
副次評価項目
52週後のHbA1c変化量、HbA1c7.0%未満および6.5%以下達成率、空腹時血糖値、7ポイント血糖自己測定値、HOMA2-%B、HOMA2-%S、体重など
安全性
26週後の副作用発現率は、トルリシティ群20.4%(57/280例)、プラセボ群8.6%(6/70例)であった。トルリシティ群の主な副作用(発現率2%以上)は、便秘5.4%、悪心4.3%、下痢3.9%、腹部不快感3.2%であった。プラセボ群では便秘、悪心、腹部不快感、消化不良、リパーゼ増加、頭痛、口渇が各1例に認められた。重篤な有害事象はトルリシティ群3例、プラセボ群2例、投与中止に至った有害事象はトルリシティ群3例に認められた。死亡例の報告はなかった。

Miyagawa J,et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 974(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料

HbA1c変化量(52週後)〔副次評価項目〕

さらに投与52週後のHbA1c変化量は、トルリシティ群で1.39%低下し、リラグルチド群は1.19%低下しました。群間差は-0.20%(95%信頼区間:-0.39, -0.01)であり、トルリシティ群においてリラグルチド群に対して有意なHbA1cの低下が認められました。

プラセボ・リラグルチド対照単独療法第Ⅲ相試験(H9X-JE-GBDP試験)

対象
食事・運動療法のみ、またはチアゾリジン以外の経口血糖降下薬単独療法を受けていた血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者487例(被験薬投与開始1週間前のHbA1cが7.0%以上、10.0%以下)
方法
二重盲検下でブラセボまたはトルリシティ0.75mgを週1回、非盲検下でリラグルチドを1週目0.3mg、2週目0.6mg、3週目以降0.9mg、1日1回、52週間皮下投与した。ブラセボ群は26週以降、トルリシティ0.75mgに切り替え、週1回皮下投与した。なお、経口血糖降下薬投与例は8週間ウォッシュアウトした後に、いずれかの投与群に割り付けられた。
主要評価項目
26週後のHbA1c変化量
副次評価項目
52週後のHbA1c変化量、HbA1c7.0%未満および6.5%以下達成率、空腹時血糖値、7ポイント血糖自己測定値、HOMA2-%B、HOMA2-%S、体重など
解析方法
26週後のHbA1c変化量の群間差(トルリシティ群-リラグルチド群)の最小二乗平均の95%信頼区間の上限が0.4%未満の場合に、リラグルチドに対するトルリシティの非劣性が検証されるとした。
安全性
52週後の副作用発現率は、トルリシティ群※ 24.3%(68/280例)、リラグルチド群28.5%(39/137例)であった。主な副作用(発現率2%以上)は、トルリシティ群では便秘6.1%、悪心4.3%、下痢3.9%、腹部膨満3.2%、腹部不快感3.2%、リラグルチド群では悪心7.3%、便秘5.8%、食欲減退5.8%、腹部膨満5.1%、注射部位紅斑2.9%、下痢2.2%、腹部不快感2.2%であった。重篤な有害事象はトルリシティ群※ 9例、リラグルチド群7例、投与中止に至った有害事象はトルリシティ群※ 11例、リラグルチド群10例であった。死亡例の報告はなかった。

※:試験開始時からトルリシティを投与されていた症例

Odawara M, et al. Diabetes Obes Metab. 2016; 18: 249(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料

3トルリシティの安全性

この試験でのトルリシティ投与52週後における有害事象の発現率は表に示した通りです。最も多く認められた有害事象は鼻咽頭炎でした。その他は便秘、下痢、悪心などの胃腸障害が主に認められました。なお、低血糖の発現割合はいずれの群においても2.9%でした。

有害事象(52週後)

プラセボ・リラグルチド対照単独療法第Ⅲ相試験(H9X-JE-GBDP試験)

*1
手骨折、浸潤性乳管癌、卵巣癌、前立腺癌、肩回旋筋腱板症候群、創傷感染
*2
結腸癌(2)、大腸ポリープ(2)、腰部脊柱管狭窄症状(2)、細菌感染、胆管結石、胃腸炎、突発難聴
*3
好酸球増加症、大腿骨頚部骨折、HIV感染、椎間板突出、頭蓋内動脈瘤、肺腺癌、膵癌、ニューモシスチス・イロベチイ肺炎

Odawara M, et al. Diabetes Obes Metab. 2016; 18: 249(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料

低血糖(52週後)

プラセボ・リラグルチド対照単独療法第Ⅲ相試験(H9X-JE-GBDP試験)

※症候性低血糖または血糖値が70mg/dL以下の場合

Odawara M, et al. Diabetes Obes Metab. 2016; 18: 249(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料

4実際に処方して実感したトルリシティの好適例

この試験の結果などを踏まえ、私はインクレチン効果を期待しやすい、インスリン分泌能の残っている比較的若い患者さんにトルリシティを投与し、良い血糖コントロールが実現できていると感じています。今回お示しした臨床試験はトルリシティ単独投与でしたが、実臨床では経口血糖降下薬1~2剤で効果が不十分な患者さんにトルリシティを併用することが多いです。
国内臨床試験の被験者のように、比較的若い方で、罹病期間はあまり長くなく、重症でもない患者さんの中で、特に治療への意欲は高いものの、忙しくて治療に十分取り組めていないような方や、薬をつい飲み忘れてしまいがちな方、思ったように血糖値が下がらず、治療へのモチベーションが低下してしまっているような方が良い適応になるのではないかと考えています。

5まとめ

監修:種田 紳二先生
医療法人 萬田記念病院 副院長

トルリシティは週1回の投与で優れた血糖低下効果を示すため、患者さんのライフスタイルに合わせた治療が実施できるとともに、治療のモチベーションを上げることもできる薬剤であると考えています。患者さんを中心とした2型糖尿病診療を行う上で、トルリシティはより良い治療選択肢になり得るのではないでしょうか。

効能・効果、用法・用量、使用上の注意等は、添付文書をご参照ください。

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