バイオシミラー


バイオ医薬品とは?

バイオシミラー(バイオ後続品)とは、国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品(先行バイオ医薬品)と同等/同質の品質、安全性、有効性を有する医薬品として、異なる製造販売業者により開発された医薬品です1)。バイオ医薬品とは、生物由来のタンパク質、また微生物やヒトおよび動物の細胞に由来する高分子の医薬品です。バイオ医薬品にはヒトインスリンや抗体、ワクチン、血液由来の医薬品および血液製剤、アレルゲン抽出物など多くの種類があります。現在、バイオ医薬品は、さまざまな疾患の検査、治療、予防に使用されています2)。

生物学的製剤(バイオ医薬品)と低分子化合物の比較

低分子化合物、単純な構造生物学的製剤、複雑な構造の生物学的製剤

バイオ医薬品は、化学合成で製造される低分子医薬品に比べ、有効成分の分子量が大きく、複雑な構造を有しています。また、微生物や培養細胞を利用して製造されるため、有効成分となるタンパク質の高次構造や翻訳後修飾(糖鎖など)の差異が生物活性や薬物動態に影響を及ぼす可能性、製造過程に由来する不純物(宿主生物のタンパク質や核酸など)が免疫原性を含む安全性に影響を及ぼす可能性があります3)。

1)「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」薬食審査発第0304007号
2) https://www.fda.gov/BiologicsBloodVaccines/default.htm
3) 山前浩一郎 ほか:PROGRESS IN MEDICINE: 2014;34(10): 1793-1803.

バイオシミラーとは?

インスリン グラルギンの場合

インスリン グラルギンBS注「リリー」 LANTUS®
会社名 日本イーライリリー株式会社
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
サノフィ株式会社
販売名 インスリン グラルギンBS注ミリオペン®「リリー」
インスリン グラルギンBS注カート「リリー」
ランタス®注ソロスター®
ランタス®注カート
ランタス®注 100単位/mL1)
会社名 インスリン グラルギン(遺伝子組換え)
[インスリン グラルギン後続1]
インスリン グラルギン(遺伝子組換え)
薬効分類名 持効型溶解インスリンアナログ製剤
成分・含量 1カートリッジまたはキット2)中の有効成分:
インスリン グラルギン(遺伝子組換え)
[インスリン グラルギン後続1]300単位
1カートリッジまたはキット2)中の有効成分:
インスリン グラルギン(遺伝子組換え)300単位
薬価 ミリオペン®:1,418円
カート:915円
ソロスター®:1,936円
カート:1,431円
添加物 濃グリセリン、m-クレゾール、酸化亜鉛、pH調節剤 グリセリン、m-クレゾール、塩化亜鉛、pH調節剤2成分
効能・効果 インスリン療法が適応となる糖尿病
用法・用量 通常、成人では、初期は1日1回4~20単位を(カートリッジ製剤の場合はペン型注入器を用いて)皮下注射するが、ときに他のインスリン製剤を併用することがある。注射時刻は朝食前又は就寝前のいずれでもよいが、毎日一定とする。投与量は、患者の症状及び検査所見に応じて増減する。なお、その他のインスリン製剤の投与量を含めた維持量は、通常1日4~80単位である。ただし、必要により上記用量を超えて使用することがある。
性状 無色澄明の液(注射剤)
pH 3.5~4.5
浸透圧比 約0.8(生理食塩液に対する比)


LANTUS®は先行バイオ医薬品、インスリン グラルギンBS注「リリー」はバイオシミラーです。薬価は2018年8月時点

1)本表では、100単位/mLに関する情報は示していません
2)カートリッジ製剤をあらかじめインスリンペン型注入器に装填した使い捨て型キット

バイオシミラー(バイオ後続品)とは、国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品(先行バイオ医薬品)と同等/同質の品質、安全性、有効性を有する医薬品として、異なる製造販売業者により開発された医薬品です1)。先発品があることから、低分子医薬品の後発品であるジェネリック医薬品と同じようなものと考えられがちですが、この二つの性質は大きく異なっています。

バイオシミラーとジェネリック医薬品(後発医薬品)の比較

バイオシミラー ジェネリック医薬品(後発医薬品)
定義 新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品(先行バイオ医薬品)と同等/同質の品質、安全性および有効性を有する医薬品 先発医薬品と同一の有効成分を同一量含み、同一経路から投与する製剤で、効能・効果、用法・用量が原則的に同一であり、先発医薬品と同等の臨床効果・作用が得られる医薬品
製造方法 バイオテクノロジー技術を用いて製造 化学合成により製造
製品特性 ●高分子化合物(タンパク質など)
●有効成分の構造が複雑(複数の機能部位から構成されるなど)
●化学合成物質に比べて不安定であり、安定化に工夫が必要
●同一性の評価が困難(同等性/同質性を評価)
●有効成分の高次構造や翻訳後修飾による不均一性の差異が生物活性などに影響する可能性あり
●宿主細胞由来不純物を含む製造工程由来不純物が免疫原性などに影響する可能性あり
●低分子化合物
●有効成分の構造が比較的単純
●安定した分子
●同一性の評価が容易
開発要件 ●独自に製法(セルライン・セルバンクを含む)を確立
●規格試験方法の設定
●安定性試験(長期保存試験など)
●有効成分/製剤の品質特性の評価+先行バイオ医薬品との同等性/同質性の評価
●非臨床試験での同等性/同質性の評価
●臨床試験[薬物動態(PK)、薬力学(PD)およびPK/PD試験を含む]での同等性/同質性の評価
●製造販売後調査の実施
●規格試験方法の設定
●安定性試験(加速試験)
●生物学的同等性試験(静注は免除)


安藤 潔 : 血液内科: 2013;67(2): 241-246.より改変

バイオシミラーはバイオ医薬品の後続品であり、複雑な構造を有するため、先行バイオ医薬品との同一性を示すことが困難です。したがって、品質特性のほか有効性、安全性について先行バイオ医薬品との同等性/同質性を検証する臨床試験が行われます。また、バイオシミラーでは免疫原性の問題等、ジェネリック医薬品と異なる要素があることから、製造販売後に安全性プロファイル等について引き続き調査する必要があるため、製造販売後調査が行われます)。

1)「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」薬食審査発第0304007号

バイオシミラーの開発と承認

バイオシミラーの開発と承認要件の詳細について動画でご説明いたします。

「バイオシミラーの開発と承認」

東京理科大学経営学部 教授 坂巻 弘之 先生

バイオシミラーに求められる検証

医薬品区分による承認時提出データの比較

山前浩一郎 ほか:PROGRESS IN MEDICINE: 2014;34(10): 1793-1803.

「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」薬食審査発第0304007号

バイオシミラー開発プログラム1,4,5)

分析試験

品質特性の解析と比較

バイオシミラーの開発においては、独自に製法を確立し、品質特性(構造・組成、物理的化学的性質、生物活性等)の類似性の解析を行い、品質特性の同等性・同質性を確認すると共に、適切な規格、試験方法、工程管理法を設定します。

非臨床試験

バイオシミラーの開発では、新有効成分含有医薬品と比較すると、非臨床試験における検討項目の種類は限られます。しかし、バイオシミラーでもヒトを対象とした臨床試験に先立ち、有効性・安全性を確認するために必要な非臨床試験が実施されます1)

インスリン グラルギンBS注「リリー」では、in vitro薬理試験において、インスリン活性に関する薬理学的特性(受容体結合親和性、受容体活性化能、脂質合成能、細胞分裂促進活性)は、標準製剤との高い類似性が示されました。また、1ヵ月間皮下投与毒性試験(ラット)で、トキシコキネティクスや血糖降下作用、全身毒性プロファイルなどが評価され、標準製剤との類似性が確認されました2)

第Ⅰ相臨床試験

バイオシミラーの開発において、臨床試験では、まず、薬物動態における先行バイオ医薬品との生物学的同等性評価を目的とした臨床薬理試験が行われます1)

- 薬物動態試験(PK試験)
薬物動態試験とは、製剤を投与した時の体内動態を検証する試験です。バイオシミラーの場合、投与後に製剤の血中濃度を測定し、標準製剤と比較して生物学的同等性を検証します。

- 薬力学試験(PD試験)
薬力学試験とは、製剤の臨床的効果を検証する試験です。製剤の投与量や濃度と効果との関連を調べます。臨床効果を反映するマーカーがある場合は、PDを指標とした生物学的同等性を検証します。

インスリン グラルギンBS注「リリー」の開発では、第Ⅰ相臨床試験において正常血糖クランプ下におけるPK/PD試験が行われ、先行バイオ医薬品との同等性/同質性が検証されました。PKではCmax(最高血中濃度)とAUC(血中濃度-時間曲線下面積)、PDではGtot(累積グルコース注入量)とRmax(最大グルコース注入率)をパラメータとして標準製剤との比較が行われ、これらの主要パラメータが事前に規定された生物学的同等性の許容域に含まれることが確認されました3)

第Ⅲ相臨床試験

薬物動態(PK)試験、薬力学(PD)試験、またはPK/PD試験で目的とする臨床エンドポイントにおける先行バイオ医薬品との同等性/同質性が確認された場合には、有効性に関する第Ⅲ相臨床試験を省略できる場合もあります。しかし、PK、PDもしくはPK/PD試験の結果を合わせても臨床効果を反映する適切なマーカーがない場合は、有効性の同等性/同質性を検証する第Ⅲ相臨床試験の実施が必要となります。
第Ⅲ相臨床試験では、必要かつ妥当な症例数において臨床的に確立されたエンドポイントにより、事前に許容域を規定し、有効性および安全性における同等性/同質性を確認します。また、第Ⅰ相臨床試験において有効性に関する同等性/同質性が示された場合であっても、免疫原性を含む安全性に関する第Ⅲ相臨床試験を行う必要があります。さらに、臨床試験の情報は限られているので、製造販売後も引き続き安全性を調査することが義務付けられています1)

インスリン グラルギンBS注「リリー」では、2つの第Ⅲ相臨床試験が行われ、主要評価項目であるHbA1cの変化量の差が事前に規定された非劣性の許容域にあり、標準製剤に対する非劣性が確認されました。また、安全性についても標準製剤と同様であることが示されました6,7)

1)「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」薬食審査発第0304007号

2) 審査結果報告書

3) Linnebjerg H, et al. Diabetes Care. 2015; 38(12): 2226-33.

4) https://www.fda.gov/media/82658/download

5) http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guidgeline/2013/06/WC500144124.pdf

6) Blevins TC, et al. Diabetes Obes Metab. 2015;17(8):726-733.

7) Rosenstock J, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17(8): 734-741.

医薬品リスク管理計画

医薬品リスク管理計画(RMP)とは、医薬品の開発から製造販売後まで一貫したリスク管理をまとめ、医薬品リスクの管理を適切に行うようにするものです。個別の医薬品ごとに、安全性検討事項、医薬品安全性監視活動、リスク最小化活動がまとめられます。医薬品安全性監視活動とリスク最小化活動には、「通常」と「追加」の2種類の活動があります。「通常の活動」とは、全ての医薬品に共通して製造販売業者が実施する活動で、「追加の活動」とは、医薬品の特性を踏まえ個別に実施される活動です1)

安全性検討事項、医薬品安全性監視計画、リスク最小化計画

https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0002.html

インスリン グラルギンBS注「リリー」の医薬品リスク管理計画では、ベネフィットとリスクを評価し、これに基づいて必要な安全対策を実施することで製造販売後の安全性の確保を図ることを目的としています。また、重要な特定されたリスク(低血糖、過敏症反応、注射部位反応)、重要な潜在的リスク(投与過誤、新生物、抗インスリン グラルギン抗体産生の影響)及び使用実態下における有効性についても情報収集を行います。通常の医薬品安全性監視活動として自発報告、文献・学会情報、外国措置報告、臨床試験及び製造販売後調査より報告される有害事象症例の評価及び当局への報告を、追加の医薬品安全性監視活動として特定使用成績調査(1,000例)を行っています2)

患者さん向け「知っていますか?インスリンのバイオシミラー」

バイオシミラー・インスリンについて

患者さん向け「知っていますか?インスリンのバイオシミラー」

開発までの道のり


包括的プログラム

(インスリン グラルギンBS注「リリー」は以下、本剤/LANTUS®は以下、標準製剤と表記します)

バイオシミラーの開発では、新規のバイオ医薬品と同様に十分な品質特性解析を行います。標準製剤との高い類似性が確認された場合、さらに臨床試験において同等性/同質性の検証が行われます。本剤は、生物学的同等性試験のガイドライン、バイオシミラーの指針に準じて行われた試験データに基づくステップ・バイ・ステップでの検証を重ね、同等性/同質性を高い信頼性で証明する包括的なプログラムと総被験者1,566例のデータに基づき開発、評価されました。

インスリン グラルギンBS注「リリー」の包括的開発プログラム

包括的開発プログラム

1) Blevins TC, et al. Diabetes Obes Metab. 2015;17(8):726-733.

2) Rosenstock J, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17(8): 734-741.

3) 陣内秀昭 ほか: Progress in Medicine. 2015;35(9):1497-1506.

4) Linnebjerg H, et al. Diabetes Care. 2015; 38(12): 2226-33.

これらの試験はイーライリリー社およびベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。

薬物動態・薬力学

(インスリン グラルギンBS注「リリー」は以下、本剤/LANTUS®は以下、標準製剤と表記します)




血清中インスリン濃度(外国人データ)

血清中インスリン濃度(C-ペプチド補正)推移(4期クロスオーバー法)
血糖降下作用(外国人データ)
グルコース注入率の推移(4期クロスオーバー法)

Linnebjerg H, et al. Diabetes Care. 2015; 38(12): 2226-33.

本試験はイーライリリー社およびベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。

対 象:

  • 外国人健康成人80例

方 法:

  • 本剤または標準製剤それぞれ0.5単位/kgを単回皮下投与し、24時間正常血糖クランプ法実施下で血清中インスリン濃度を測定した。

判定基準:

  • 主要パラメータ(AUC0-24、Cmax)の幾何平均値の比の90%信頼区間が0.80~1.25の間に含まれた場合、薬物動態は同等であると結論付けることとした。

安全性:

  • 本剤との因果関係を否定できない有害事象は80例中11例(13.8%)に16件、標準製剤との因果関係を否定できない有害事象は80例中14例(17.5%)に16件発現した。

血清中インスリン濃度(C-ペプチド補正)は、本剤と標準製剤で同様の推移を示し、生物学的同等性が確認されました。

対 象:

  • 外国人健康成人80例

方 法:

  • 本剤または標準製剤それぞれ0.5単位/kgを単回皮下投与し、24時間正常血糖クランプ法実施下で血清中インスリン濃度を測定した。

判定基準:

  • 主要パラメータ(AUC0-24、Cmax)の幾何平均値の比の90%信頼区間が0.80~1.25の間に含まれた場合、薬物動態は同等であると結論付けることとした。

安全性:

  • 本剤との因果関係を否定できない有害事象は80例中11例(13.8%)に16件、標準製剤との因果関係を否定できない有害事象は80例中14例(17.5%)に16件発現した。

血糖降下作用は、本剤と標準製剤で同様の推移を示し、生物学的同等性が確認されました。

本剤の用法・用量については添付文書をご参照ください。

1型糖尿病患者における臨床成績

第Ⅲ相国際共同試験 [ELEMENT 1試験]

(インスリン グラルギンBS注「リリー」は以下、本剤/LANTUS®は以下、標準製剤と表記します)

試験方法 1)

目 的 :

  • 成人1型糖尿病患者を対象として、食前のインスリン リスプロと併用した際のインスリン グラルギンBS注ミリオペン®「リリー」及びインスリン グラルギンBS注カート「リリー」(以下、本剤)がインスリン グラルギン(遺伝子組換え)(以下、標準製剤)に対して非劣性を示すことを検証する無作為化、実薬対照非盲検、並行群間比較試験。

対 象 :

  • 成人1型糖尿病患者536※例(日本人100例を含む)

薬 剤 :

  • 本剤(268例(日本人49例))及び標準製剤(267例(日本人51例))

投与方法:

  • 本剤又は標準製剤を1日1回皮下投与した。
    本剤又は標準製剤の初回投与量は、試験開始前に投与されていた基礎インスリン(1日1回)と同じ投与量(単位)とし、同じ投与時間に皮下投与した。インスリン リスプロは、試験開始前に投与されていた食前インスリンと同じ投与量(単位)を1日3回食前に投与した。また、低血糖の発現を抑えながら、目標血糖を達成できるように、インスリン投与量を調整した。

試験期間:

  • 投与期24週間、継続投与期28週間、後観察期4週間
  • * 本剤群の1例は治験薬投与前に試験中止

評価項目:

  • <有効性>
  • 主要評価項目:
    • 24週時(LOCF※)におけるHbA1cのベースラインからの変化量
  • 副次的評価項目:
    • 6、12、24、36及び52週の各評価時におけるHbA1cのベースラインからの変化量、HbA1cが7.0%未満又は6.5%以下を達成した被験者の割合、7ポイント血糖自己測定値(SMBG)、血糖値の被験者内の変動、試験終了時の基礎インスリン及びインスリン リスプロの投与量、体重、BMI、免疫原性抗体)
    • * 投与後のデータが欠測の場合に、直前の欠測でないデータを代用する方法。本試験では、24週又は52週の測定値が欠測の場合、LOCF法を用いて投与後の最終測定値を24週又は52週の値として補完した。
  • <安全性>
  • 有害事象、低血糖、臨床検査値(抗インスリン抗体を含む)、バイタルサイン
  • <ヘルスアウトカム>
  • インスリン治療満足度質問票(ITSQ)、成人低血糖調査(ALBSS)

解析計画:

  • 日本人部分集団における本剤の有効性と安全性の主解析との一貫性を評価するために、サブグループ解析を行った。

判定基準:

  • HbA1c のベースラインからの変化量の差(本剤−標準製剤)の95%信頼区間の上限が0.4%未満であった場合、本剤は標準製剤に対して非劣性であると結論付けることとした。また、その下限が-0.4%を上回った場合、標準製剤は本剤に対して非劣性であると結論付けることとした。いずれの比較でも非劣性が示された場合、本剤と標準製剤の有効性は同等であると判断した。

有害事象:

  • 有害事象は、すべての有害事象及び因果関係を否定できない有害事象(治験薬、疾患及び治験手順との関連)、重篤な有害事象、試験中止に至った有害事象、アレルギー関連の有害事象、注射部位関連の有害事象と規定し、MedDRA ver.15.1を用いて基本語(PT)及び器官別大分類(SOC)別に要約した。発現例数及び発現割合を示し、投与群間の比較を行った。

1型糖尿病患者におけるHbA1cの変化量

HbA1cのベースラインからの変化量(全体集団、FAS) 1-2)

最小二乗平均値±標準誤差
ANCOVA(国、基礎インスリン注射の時間[昼間または夕方/就寝時]および治療を固定効果、ベースラインHbA1cを共変量とした)
Δ:標準製剤と本剤のHbA1c変化量の差
〈 〉内はHbA1cのベースライン平均値±標準偏差
Nは最大の症例数

対 象 :

  • 成人1型糖尿病患者536例※(日本人100例を含む)*本剤群の1例は治験薬投与前に試験中止

方 法 :

  • HbA1cのベースラインからの変化量を指標とした有効性評価において、食前のインスリン リスプロ(1日3回皮下投与)と併用した際に本剤が標準製剤(いずれも1日1回皮下投与)に対して非劣性を示すことを検証した。本剤または標準製剤の初回投与量は、試験開始前に投与されていた基礎インスリン(1日1回)と同じ投与量(単位)とし、低血糖の発現を抑えながら目標血糖値に到達できるように、いずれの投与群でもインスリンの投与量をあらかじめ定めたアルゴリズムにしたがって調整した。最大解析対象のうち、ベースライン値及びベースライン測定後少なくとも1点の測定値が存在する被験者の各評価時におけるHbA1c値を評価した(ANCOVAモデル)。

評価項目:

  • 主要評価項目:
    • 24週時(LOCF)におけるHbA1cのベースラインからの変化量
  • 副次的評価項目:
    • 6、12、24、36及び52週の各評価時におけるHbA1cのベースラインからの変化量、HbA1cが7.0%未満又は6.5%以下を達成した被験者の割合、7ポイント血糖自己測定値(SMBG)、血糖値の被験者内の変動、試験終了時の基礎インスリン及びインスリン リスプロの投与量、体重、BMI、免疫原性(抗体)

解析計画:

  • 日本人部分集団、標準製剤前治療集団における本剤の有効性と安全性の主解析との一貫性を評価するために、サブグループ解析を行った。

判定基準:

  • HbA1cのベースラインからの変化量の差(本剤−標準製剤)の95%信頼区間の上限が0.4%未満であった場合、本剤は標準製剤に対して非劣性であると結論付けることとした。また、その下限が-0.4% を上回った場合、標準製剤は本剤に対して非劣性であると結論付けることとした。いずれの比較でも非劣性が示された場合、本剤と標準製剤の有効性は同等であると判断した。

安全性 :

  • 52週間の全投与期間において、本剤群で268例中17例(6.3%)、標準製剤群で267例中14例(5.2%)に副作用が報告された。主なものは、本剤群及び標準製剤群で低血糖(10例(3.7%)、9例(3.4%))及び注射部位反応(2例(0.7%)、1例(0.4%))であった。重篤な副作用は、本剤群で10例、標準製剤群で9例が報告され、いずれも低血糖症であった。副作用による中止は、本剤群では本試験において報告されなかったが、標準製剤群では低血糖症が1例報告された。また、副作用による死亡は本試験において報告されなかった(承認時)。

HbA1cのベースラインからの変化量(サブグループ解析、FAS) 3-4)

<日本人集団2)

最小二乗平均値±標準誤差
ANCOVA(基礎インスリン注射の時間[昼間または夕方/就寝時]および治療を固定効果、ベースラインHbA1cを共変量とした)
Δ:標準製剤と本剤のHbA1c変化量の差
〈 〉内はHbA1cのベースライン平均値±標準偏差
Nは最大の症例数

対 象:

  • 成人1型糖尿病患者536例のうち日本人患者100例

安全性:

  • 治験薬と関連ありと判断された有害事象は、本剤例群で2例(4.1%)、標準製剤群で4例(7.8%)に発現した。重篤な有害事象は、本剤群で3例、標準製剤群で6例に発現し、2例以上認められた重篤な有害事象は低血糖症(本剤群2例、標準製剤群4例)であった。有害事象による中止は、標準製剤群で3例、本剤群では本試験において報告されなかった。有害事象による死亡は、本試験において報告されなかった。

その他の試験概要は第Ⅲ相国際共同試験(ELEMENT 1)と同様です

<標準製剤前治療集団1)

最小二乗平均値±標準誤差
ANCOVA(国、基礎インスリン注射の時間[昼間または夕方/就寝時]および治療を固定効果、ベースラインHbA1cを共変量とした)
Δ:標準製剤と本剤のHbA1c変化量の差
〈 〉内はHbA1cのベースライン平均値±標準偏差
Nは最大の症例数

対 象:

  • 成人1型糖尿病患者536例のうち標準製剤による前治療歴がある452例

安全性:

  • 治験薬と関連ありと判断された有害事象は、本剤群で14例(6%)、標準製剤群で11例(5%)に発現した。1件以上の重篤な有害事象は、本剤群で17例、標準製剤群で22例に発現した。なお、有害事象による中止、死亡は文献内に記載がなかった。その他の試験概要は第Ⅲ相国際共同試験(ELEMENT 1)と同様です。

有害事象の概要(FAS)1)

有害事象a 本剤 (N=268)
n(%)
標準製剤 (N=267)
n(%)
死亡 0(0) 1(<1)
重篤な有害事象 20(8) 24(9)
有害事象による中止 2 (1) 6(2)
注射部位関連の有害事象 7(3) 3(1)
治療関連有害事象 167(62) 166(62)
 治験薬との因果関係が否定できない有害事象 17(6) 14(5)
 試験手順との因果関係が否定できない有害事象 2(1) 2(1)
 疾患(糖尿病)との因果関係が否定できない有害事象 21(8) 16(6)
アレルギー関連の有害事象 20(8) 11(4)

a 1人の患者が複数のカテゴリーに該当する場合もある

Nは最大の症例数

52週間の全投与期間において、本剤群で268例中17例(6.3%)、標準製剤群で267例中14例(5.2%)に副作用が発現し、発現割合は本剤群と標準製剤群で同様でした。

低血糖発現率(FAS)1)

発現率(件/人・年) 本剤(N=268) 標準製剤(N=267)
すべての低血糖 77.0±68.7 79.8±74.5
夜間低血糖 16.1±20.2 17.3±19.5
重症低血糖 0.07±0.46 0.08±0.46

平均値±標準偏差

Nは最大の症例数

血糖値が70mg/dL以下または低血糖に関連する兆候または症状が認められる場合を低血糖と定義した。夜間低血糖は就寝から起床までに何らかの低血糖イベントが発現した場合、重症低血糖は低血糖イベントに対して積極的な治療(炭水化物やグルカゴンの投与)またはその他の処置のために第三者の援助が必要になった場合と定義した。

52週時における本剤群の低血糖発現率は標準製剤群と同様であり、臨床上問題となる差は両群間で認められませんでした。

2型糖尿病患者における臨床成績

海外第Ⅲ相臨床試験 [ELEMENT 2試験(海外データ)]

(インスリン グラルギンBS注「リリー」は以下、本剤/LANTUS®は以下、標準製剤と表記します)

試験方法 1)

対 象 :

  • 成人2型糖尿病患者759例

方 法 :

  • 経口血糖降下薬併用下で、本剤又は標準製剤を1日1回皮下投与した(24週間)。初回投与量は、インスリン未治療の場合は10単位/日、試験前に標準製剤の投与を受けていた場合は試験前の標準製剤の投与量と同量とし、治験担当医師の指導の下、低血糖の発現に注意しながら空腹時血糖値が100mg/dL以下になるよう1日1単位ずつ漸増して投与量を調整した。

評価項目 :

  • 主要評価項目:
    • 24週時(LOCF)におけるHbA1cのベースラインからの変化量
  • 副次的評価項目:
    • 7ポイント血糖自己測定値(SMBG)、血糖値の被験者内変動、4、8、12、16及び20週時又はLOCFにおけるHbA1cのベースラインからの変化量、HbA1cが7.0%未満又は6.5%以下を達成した被験者の割合、試験終了時の基礎インスリンの投与量、体重、免疫原性(抗体)

判定基準 :

  • HbA1c のベースラインからの変化量の差(本剤−標準製剤)の95%信頼区間の上限が0.4%未満であった場合、本剤は標準製剤に対して非劣性であると結論付けることとした。また、その下限が-0.4%を上回った場合、標準製剤は本剤に対して非劣性であると結論付けることとした。いずれの比較でも非劣性が示された場合、本剤と標準製剤の有効性は同等であると判断した。

a本剤群の3例は治療薬投与前に試験中止 bNは最大症例数

LOCF=Last Observation Carried Forward(投与後のデータが欠測の場合に直前の欠測でない投与後のデータで代用する方法)

BMI=体格指数、HbA1c=グリコヘモグロビン

本剤=インスリン グラルギンBS注、標準製剤=LANTUS®、OAD=経口糖尿病薬、QD=1日1回投与、SC=皮下投与

2型糖尿病患者におけるHbA1cの変化量

HbA1cの変化量:24週時(LOCF)

最小二乗平均値±標準誤差
ANCOVA(国、SU薬使用の有無、基礎インスリン注射の時間[昼間または夕方/就寝時]および治療を固定効果、ベースラインHbA1cを共変量とした)
Δ:標準製剤と本剤のHbA1c変化量の差
Nは最大の症例数

Rosenstock J, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17(8): 734-741.より一部作図

本解析はインスリン未治療集団、標準製剤前治療集団における本剤の有効性と安全性の主解析との一貫性を評価するために、サブグループ解析として予め設定されていました。

2型糖尿病患者において、経口糖尿病薬併用下での本剤および標準製剤は、有効性、安全性における同等性/同質性が示され、臨床的に意味のある差は認められませんでした。

有害事象の概要(FAS)1)

有害事象a 本剤 (N=376)
n(%)
標準製剤 (N=380)
n(%)
死亡 1(<1) 1(<1)
重篤な有害事象 15 (4) 18 (5)
有害事象による中止 6 (2) 11 (3)
注射部位関連の有害事象 13 (4) 11 (3)
治療関連有害事象 196 (52) 184 (48)
治験薬との因果関係が否定できない有害事象 26 (7) 23 (6)
試験手順との因果関係が否定できない有害事象 6 (2) 8 (2)
疾患(糖尿病)との因果関係が否定できない有害事象 19 (5) 18 (5)
アレルギー関連の有害事象 21 (6) 27 (7)

a 1人の患者が複数のカテゴリーに該当する場合もある

Nは最大の症例数

24週間の全投与期間において、本剤群で376例中26例(7%)、標準製剤群で380例中23例(6%)に副作用が発現し、発現割合は本剤群と標準製剤群で同様でした。

低血糖発現率(FAS)1)

発現率(件/人・年) 本剤(N=376) 標準製剤(N=380)
すべての低血糖 21.3±24.4 22.3±28.2
夜間低血糖 7.6±11.8 8.1±14.6
重症低血糖 0.04±0.66 0.01±0.16

平均値±標準偏差
Nは最大の症例数
血糖値が70mg/dL以下または低血糖に関連する兆候または症状が認められる場合を低血糖と定義した。夜間低血糖は就寝から起床までに何らかの低血糖イベントが発現した場合、重症低血糖は低血糖イベントに対して積極的な治療(炭水化物やグルカゴンの投与)またはその他の処置のために第三者の援助が必要になった場合と定義した。

24週時における本剤群の低血糖発現率は標準製剤群と同様であり、臨床上問題となる差は両群間で認められませんでした。

【用法・容量】(抜粋)

<用法・用量に関連する使用上の注意>(抜粋)
3. 中間型又は持続型インスリン製剤から本剤に変更する場合、以下を参考に本剤の投与を開始し、その後の患者の状態に応じて用量を増減するなど、本剤の作用特性[「薬物動態」の項参照]を考慮の上慎重に行うこと。[「重要な基本的注意」の項参照]

(1)インスリン グラルギン300単位/mL製剤から本剤に変更する場合:
通常初期用量は、前治療のインスリン グラルギン300単位/mL製剤の1日投与量と同単位よりも低用量を目安として投与を開始する。

(2)インスリン グラルギン300単位/mL製剤以外の中間型又は持続型インスリン製剤から本剤に変更する場合:

  • 1) 1日1回投与の中間型又は持続型インスリン製剤から本剤に変更する場合、通初期用量は、前治療の中間型又は持続型インスリン製剤の1日投与量と同単位を目安として投与を開始する。
  • 2) 1日2回投与の中間型インスリン製剤から本剤への切り替えに関しては、使用経験がない。

(3)インスリン グラルギン300単位/mL製剤又は中間型インスリン製剤からインスリン グラルギン100単位/mL製剤への切り替え直後に低血糖があらわれることがあるので、中間型又は持続型インスリン製剤から本剤に変更する場合、併用している速効型インスリン製剤、超速効型インスリンアナログ製剤又は他の糖尿病用薬の投与量及び投与スケジュールの調整が必要となることがあるので注意すること。

1)Rosenstock J, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17(8): 734-741.

本試験はイーライリリー社およびベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。