トルリシティの特性


週1回投与

  • 患者さんのライフスタイルに合わせて、毎週同じ曜日に投与
  • 朝昼晩いつでも投与可能

簡単な操作

  • 1回使い切り
  • 操作は3ステップ
    • 針の取り付け、薬剤の混和、空打ちが不要 ・ボタンを押すと自動的に注入

優れた血糖低下効果

  • 優れたHbA1c低下効果1)~3)
  • 空腹時および食後の血糖値を改善1)~3)
    • 1) 社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料
    • 2) 社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY 試験)、承認時評価資料
    • 3) 社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDQ試験)、承認時評価資料

国内臨床試験における副作用発現率は29.7%(272/917例)

  • 主な副作用は、便秘57例(6.2%)、悪心56例(6.1%)、下痢(5.8%)でした。(承認時)
  • 重大な副作用として低血糖、アナフィラキシー、血管浮腫があらわれることがあります。
  • 類薬において急性膵炎および腸閉塞が報告されています。

週1回投与


トルリシティは、週1回投与。患者さんのライフスタイルに合わせて、毎週同じ曜日に投与します。

トルリシティは、週1回投与。<br>患者さんのライフスタイルに合わせて、毎週同じ曜日に投与します。

トルリシティの薬物動態

トルリシティの半減期は4.5日です。本剤は、週1回、朝昼晩いつでも投与することができます。

血漿中濃度
血漿中濃度

社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料

対   象 :2型糖尿病患者24例

方   法 :トルリシティ0.75mgを週1回、反復皮下投与。

簡単な操作


注射療法の経験がない患者さんでも99%の方が、「操作が簡単」と答えました(海外データ)

アデオスの操作は、3つのステップ。

  1. キャップをはずす
  2. 底面を皮膚にあててからロックを解除
  3. 注入ボタンを押す

*詳しい投与方法は、取扱説明書をご覧ください。

※試験概要

対   象 :注射療法の経験のない2型糖尿病患者214例(平均年齢61歳、平均罹病期間7.7年)

方   法 :アテオスを用いてプラセボを週1回皮下投与し、アテオスの操作が正しくできたかどうかと使用した印象を調査。1回目と4回目は医療機関で、2回目と3回目は自宅で投与。

判 定 基 準 :「とても簡単」、「簡単」、「簡単でも難しくもない」、「難しい」、「とても難しい」の5段階による患者の自己評価。214例中、試験を完了した210例で、「とても簡単」または「簡単」と答えた患者の割合を検討した。

安 全 性 :12.1%(26/214例)に有害事象が認められた。注射部位に関連する有害事象として、出血2例(0.9%)、内出血、硬結および疼痛が各1例(0.5%)に認められた。重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象および死亡例は認められなかった。

Matfin G, et al. J Diabetes Sci Technol 2015; 9: 1071
(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)

優れた血糖低下効果


経口血糖降下薬(1~2剤)への追加投与

SU薬、ビグアナイド薬(単独または併用)で血糖コントロール不十分な患者にトルリシティ週1回またはインスリングラルギン1日1回を追加したところ、インスリングラルギンに対する非劣性が示されました。
群間差は-0.54%(95%信頼区間:-0.67,-0.41)であり、インスリングラルギンに比べHbA1cが有意に低下しました。

HbA1c変化量(26週後)[主要評価項目]
HbA1c変化量(26週後)[主要評価項目]

Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)

社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料
トルリシティにより、71.3%の症例がHbA1c7.0%未満を、51.1%の症例が6.5%以下を達成しました。

HbA1c目標達成率(26週後)[副次評価項目]
HbA1c目標達成率(26週後)[副次評価項目]

Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)

社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料

体重変化量(26週後)[参考情報]
体重変化量(26週後)[参考情報]

Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)

社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料

対   象 :食事・運動療法とスルホニルウレア(SU)薬、ビグアナイド(BG)薬の単独または併用で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者361例(被験薬投与開始4週間前のHbA1cが7.0%以上、10.0%以下)

方   法 :SU薬※1、BG薬※2の単独または併用下で、トルリシティ0.75mgを週1回またはインスリングラルギンを1日1回就寝前に26週間皮下投与。インスリングラルギンは4~8単位から開始し、目標血糖値(空腹時血糖値70~110mg/dL)に合わせて用量を調節。
※1 グリベンクラミド2.5~5mg/日、グリクラジド60~80mg/日、グリメピリド2~3mg/日
※2 メトホルミン750~1500mg/日、 ブホルミン100~150mg/日

主要評価項目:26週後のHbA1c変化量

副次評価項目:HbA1c7.0%未満および6.5%以下達成率、空腹時血糖値、8ポイント血糖自己測定値、体重など

解 析 方 法 :26週後のHbA1c変化量の群間差(トルリシティ群-インスリングラルギン群)の最小二乗平均の95%信頼区間の上限が0.4%未満の場合にインスリングラルギンに対するトルリシティの非劣性が、同じく上限が0%未満の場合にインスリングラルギンに対するトルリシティの優越性が検証されるとした。

安 全 性 :26週後の副作用発現率は、トルリシティ群29.8%(54/181例)、インスリングラルギン群2.2%(4/180例)であった。トルリシティ群の主な副作用(発現率2%以上)は、下痢8.3%、悪心7.7%、便秘6.6%、リパーゼ増加3.3%、嘔吐2.8%、食欲低下2.8%であった。インスリングラルギン群では便秘、糖尿病神経障害、異常感、注射部位内出血、末梢性浮腫が各1例に認められた。重篤な有害事象はトルリシティ群9例、インスリングラルギン群3例、投与中止に至った有害事象はトルリシティ群6例、インスリングラルギン群2例であった。死亡例の報告はなかった。

単独投与

トルリシティの週1回・単独投与によりHbA1cが1.43%低下し、71.4%の症例がHbA1c7.0%未満を達成しました。

HbA1c目標達成率(26週後)[主要評価項目]
HbA1c目標達成率(26週後)[主要評価項目]
HbA1c目標達成率(7.0%未満、26週後)[副次評価項目]
HbA1c目標達成率(7.0%未満、26週後)[副次評価項目]

Miyagawa J, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 974(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料

対   象 :食事・運動療法のみ、またはチアゾリジン以外の経口血糖降下薬単独療法を受けていた血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者487例(被験薬投与開始1週間前のHbA1cが7.0%以上、10.0%以下)

方   法 :二重盲検下でプラセボまたはトルリシティ0.75mgを週1回、非盲検下でリラグルチドを1週目0.3mg、2週目0.6mg、3週目以降0.9mg、1日1回、52週間皮下投与した。プラセボ群は26週以降、トルリシティ0.75mgに切り替え、週1回皮下投与した。なお、経口血糖降下薬投与例は8週間ウォッシュアウトした後に、いずれかの投与群に割り付けられた。

主要評価項目:26週後のHbA1c変化量

副次評価項目:52週後のHbA1c変化量、HbA1c7.0%未満および6.5%以下達成率、空腹時血糖値、7ポイント血糖自己測定値、HOMA2-%B、HOMA2-%S、体重など

安 全 性 :26週後の副作用発現率は、トルリシティ群20.4%(57/280例)、プラセボ群8.6%(6/70例)であった。トルリシティ群の主な副作用(発現率2%以上)は、便秘5.4%、悪心4.3%、下痢3.9%、腹部不快感3.2%であった。プラセボ群では便秘、悪心、腹部不快感、消化不良、リパーゼ増加、頭痛、口渇が各1例に認められた。重篤な有害事象はトルリシティ群3例、プラセボ群2例、投与中止に至った有害事象はトルリシティ群3例に認められた。死亡例の報告はなかった。

HbA1c低下効果の持続


経口血糖降下薬の単独投与で血糖コントロール不十分な患者にトルリシティを週1回追加投与したところ、HbA1cが低下し、52週後まで安定した推移を示しました。

HbA1cの推移
HbA1cの推移

Emoto M, et al. Endocr J. 2015; 62: 1101(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)

社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDQ試験)、承認時評価資料

対   象 :経口血糖降下薬(SU薬、BG薬、α-GI、チアゾリジン、グリニド)の単独療法で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者394例(被験薬投与開始4週間前のHbA1cが7.0%以上、11.0%以下)

方   法 :試験開始前に服用していた経口血糖降下薬※の併用下で、トルリシティ0.75mgを週1回、52週間皮下投与。
※ BG薬、α-GI、チアゾリジンおよびグリニドは少なくとも添付文書で定められた通常用量、SU薬は少なくとも添付文書で定められた最大維持用量の半量

主要評価項目:安全性

副次評価項目:26週および52週後のHbA1c変化量、HbA1c7.0%未満達成率、空腹時血糖値、7ポイント血糖自己測定値、体重など

安 全 性 :52週後の副作用発現率は34.5%(136/394例)で、併用薬別ではSU薬併用群44.3%(58/131例)、BG薬併用群23.0%(14/61例)、α-GI併用群32.3%(21/65例)、チアゾリジン併用群25.8%(17/66例)、グリニド併用群36.6%(26/71例)であった。重篤な有害事象は19例、投与中止に至った有害事象は18例であった。死亡例の報告はなかった。

安全性


国内臨床試験における副作用発現割合

安全性評価対象917例中272例(29.7%)に副作用が認められ、主な副作用は、便秘57例(6.2%)、悪心56例(6.1%)、下痢53例(5.8%)でした。(承認時)

低血糖症

単独投与では52週間で2.9%(8/280例)に低血糖症が認められました。
また、SU薬、BG薬(単独または併用)への追加投与では、26週間で26.0%(47/181例)に認められました。
各種経口血糖降下薬(単独)への追加投与では、52週間で15.5%(61/394例)に認められ、特にSU薬併用群で発現割合が高まる傾向がみられました。
なお、国内臨床試験において重症低血糖症は認められませんでした。

低血糖症の発現割合

1) Miyagawa J, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 974
2) 社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料
3) Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994
4) 社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料
5) Emoto M, et al. Endocr J. 2015; 62: 1101
6) 社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDQ試験)、承認時評価資料
(上記の試験はイーライリリー社の支援により行われました)

胃腸症状

単独投与では26週間で、便秘5.4%(15/280例)、悪心4.3%(12/280例)、下痢3.9%(11/280例)などが認められました。
悪心は投与開始早期に発現する傾向がみられました。
また、悪心の持続期間の中央値は2.0日(平均値4.4日)、嘔吐の持続期間の中央値は1.0日(平均値1.3日)でした。

投与時期別の悪心の発現割合(単独投与)

社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料
(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)

トルリシティ導入ガイド-エキスパートに聞くトルリシティの使い方-


トルリシティ導入ガイド-エキスパートに聞くトルリシティの使い方-

GLP-1受容体作動薬の主な副作用は、投与初期にみられる悪心、便秘、下痢などの胃腸症状です。トルリシティの国内臨床試験でも悪心は投与開始早期に発現しており(図1)、持続期間の中央値は2.0日(平均値4.4日)と報告されています1)。当クリニックの患者さんでも、悪心は投与2、3日目に起きやすい傾向があります。
トルリシティは週1回投与なので、投与2、3日目に悪心があると、患者さんは1週間ずっと続くのではないかと不安になり、患者さんによってはその後の投与をやめてしまいます。しかし、事前に胃腸障害が起こる可能性や持続期間を説明して、実際に起きた時に患者さんが「想定内」と感じられれば、不安が軽減され、慌てることが少なくなります。
私の場合、「トルリシティには胃の動きをゆっくりにする働きがあるので、軽い吐き気や胸焼けは薬が働いているということ。たいしたことがなければ様子をみてください。でも、ひどいようだったらお薬を変えますよ」とお話しています。そのため、胃腸症状が出ても「先生の言っていた通りだ」ということになり、自己判断で中止されることも少ないです。
一方、胃腸症状と異なり、低血糖は患者さんが自覚していないことが多く、問診から把握しにくいという側面があります。国内臨床試験では、SU薬との併用で低血糖の発現割合が高まる傾向がみられているので(表)、SU薬を使用していた患者さんにトルリシティを導入する場合は、SU薬の減量を検討することが必要だと思います。

図1 投与時期別の悪心の発現割合(単独投与)
図1 投与時期別の悪心の発現割合(単独投与)
表 トルリシティの国内臨床試験における低血糖の発現割合
(経口血糖降下薬1剤との併用、52週後)
表 トルリシティの国内臨床試験における低血糖の発現割合<br>(経口血糖降下薬1剤との併用、52週後)

トルリシティの専用ペン「アテオス」は操作が簡単ですが、自己注射であることに変わりはないので、問題なく投与できているかを継続的にフォローしています。
私の場合、月ごとに患者さんに尋ねることを決めていて、例えば「ちゃんとロックを外してから、お腹にあてていますか?」あるいは「冷蔵庫から出してすぐに使うと痛いかもしれませんが、大丈夫でしたか?」といったことを、その月に来院した患者さん全員に聞きます。患者さんも受診の度にあれこれ確認されたら煩わしいと思いますが、1つ2つの簡単な質問であればうんざりすることはないでしょう。でも、月ごとに質問を変えていくので、数ヵ月単位で一通りの確認ができます。
なお、トルリシティは在宅自己注射指導管理料(650点)が算定できますが、注射療法が全く初めての患者さんに導入した場合、最初の3ヵ月間は新規導入加算(580点)も算定することができます(図2)。医師にとっては指導のしがいがありますが、患者さんにとっては負担が増えることになるので、その点は患者さんに説明した方がよいでしょう。

図2 在宅自己注射指導管理料
図2 在宅自己注射指導管理料

患者さんの治療モチベーションを保ち、治療の中断を防ぐには、やはり「効果の実感」が大きな要素でしょう。
トルリシティは国内臨床試験でHbA1cの低下や目標達成率で優れた成績が報告されていますが1〜3)、実臨床でも効果の高さを感じています。患者さんもトルリシティを導入して1ヵ月後にHbA1cが下がっているのを知ると、注射に難色を示していた方も悪心が現れた方も、「血糖値が下がるなら、もう少し続けてみます」とおっしゃいます。
患者さんは患者さんなりに、この治療が自分に必要なのかどうかを評価しているということでしょう。
また、当クリニックでは看護師が患者さんの手帳に血糖値を記録していますが、彼女たちにとっても患者さんの血糖コントロールが良くなっていくのは喜びです。トルリシティを使い始めた頃は、看護師から「注射が増えると指導が大変」と言われましたが、導入時も短時間で指導でき、かつ、血糖値が下がって患者さんの笑顔が見られることで、看護師のモチベーションアップにもつながっています。

1)社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDP試験)、承認時評価資料
2)Odawara M, et al. Diabetes Obes Metab. 2016; 18: 249
3)Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994
4)Emoto M, et al. Endocr J. 2015; 62: 1101
(上記の試験はイーライリリー社の支援により行われました)

トルリシティの製剤特性


トルリシティは、GLP-1アナログ領域のアミノ酸置換と、免疫グロブリンG4(IgG4)のFc領域の融合による分子量の増加により、週1回投与を可能にしました。トルリシティの製剤特性を動画でご紹介します。

トルリシティ導入ガイド-エキスパートに聞くトルリシティの使い方-


トルリシティ導入ガイド-エキスパートに聞くトルリシティの使い方-

DPP-4阻害薬は効果と使いやすさから、瞬く間に日本の2型糖尿病治療に根付き、多くの患者さんの初期治療に用いられるようになりました。一方でGLP-1受容体作動薬は、DPP-4阻害薬と同じインクレチン関連薬でありながら、注射剤であることが敷居を高くしてしまい、活用の場を見出されずに今日に至ってしまった感があります。
GLP-1受容体作動薬は初期治療からインスリンとの併用まで、守備範囲の広い薬剤です。インクレチン関連薬の作用機序から考えて、DPP-4阻害薬がインスリン分泌能の保たれた患者さんに適しているように、GLP-1受容体作動薬もまた、病態が進んでからではなく早期に導入することで実力を発揮します。
米国糖尿病学会/欧州糖尿病学会(ADA/EASD)のポジションステートメントでは、各種経口血糖降下薬と並び、第一選択薬のメトホルミンで目標未達の場合の追加薬として位置付けられています1)。

とはいえ、理論的に「初期段階から使用可能」だとわかっても、日常診療でGLP-1受容体作動薬をどのタイミングで導入すべきか、迷われる先生もいらっしゃると思います。
表は、トルリシティの国内臨床試験の患者背景です。GBDY試験2,3)とGBDQ試験4,5)では、「経口血糖降下薬1~2剤でHbA1c8~9%」、「罹病期間は約6~9年」という患者群で有効性が検討されています。いずれの試験でも優れたHbA1c低下効果が示されていますが、1~2剤の経口血糖降下薬(ビグアナイド薬、SU薬)に本剤またはインスリングラルギンを追加したGBDY試験では、トルリシティ群でHbA1cが1.44%低下し、インスリングラルギンとの間に非劣性および優越性が認められました(図)。HbA1c7%未満達成率でみても、トルリシティ群71.3%、インスリングラルギン群45.8%と、両群間に有意差が示されています(p<0.001、Cochran-Mantel-Haenszel test)。また、空腹時血糖値と食後血糖値に関しても、トルリシティ群で有意な低下が示されています(それぞれp<0.05、p<0.001、ANCOVA)。

表 トルリシティの国内第Ⅲ相臨床試験の患者背景
表 トルリシティの国内第Ⅲ相臨床試験の患者背景

a)Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994 (本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
b)社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料
c)Emoto M, et al. Endocr J. 2015; 62: 1101 (本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
d)社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDQ試験)、承認時評価資料

図 トルリシティのHbA1c低下効果(インスリングラルギン対象非劣性試験
図 トルリシティのHbA1c低下効果(インスリングラルギン対象非劣性試験)

対   象 :食事・運動療法とスルホニルウレア(SU)薬、ビグアナイド(BG)薬の単独または併用で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者 361例
(被験薬投与開始4週間前のHbA1cが7.0%以上、10.0%以下)

方   法 :SU薬、BG薬の単独または併用下で、トルリシティ0.75mgを週1回またはインスリングラルギンを1日1回就寝前に26週間皮下投与。インスリングラルギンは4~8単位から開始し、目標血糖値(空腹時血糖値70~110mg/dL)に合わせて用量を調節。

主要評価項目:26週後のHbA1c変化量

副次評価項目:HbA1c7.0%未満および6.5%以下達成率、空腹時血糖値、8ポイント血糖自己測定値、体重など

解 析 方 法 :26週後のHbA1c変化量の群間差(トルリシティ群-インスリングラルギン群)の最小二乗平均の95%信頼区間の上限が0.4%未満の場合にインスリングラルギンに対するトルリシティの非劣性が、同じく上限が0%未満の場合にインスリングラルギンに対するトルリシティの優越性が検証されるとした。

安 全 性 :26週後の副作用発現率は、トルリシティ群29.8%(54/181例)、インスリングラルギン群2.2%(4/180例)であった。トルリシティ群の主な副作用(発現率2%以上)は、下痢8.3%、悪心7.7%、便秘6.6%、リパーゼ増加3.3%、嘔吐2.8%、食欲低下2.8%であった。インスリングラルギン群では便秘、糖尿病神経障害、異常感、注射部位内出血、末梢性浮腫が各1例に認められた。低血糖症(症候性低血糖症または血糖値が70mg/dL以下)の発現割合は、トルリシティ群26.0%(47/181例)、インスリングラルギン群47.8%(86/180例)であった。また、夜間低血糖症はトルリシティ群8.8%(16/181例)、インスリングラルギン群26.7%(48/180例)にみられた。両群とも第三者の手助けを必要とした低血糖症は認められなかった。重篤な有害事象はトルリシティ群9例、インスリングラルギン群3例、投与中止に至った有害事象はトルリシティ群6例、インスリングラルギン群2例であった。死亡例の報告はなかった。

Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994
(本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料

こうした成績を念頭に、まずは、1~2剤の経口血糖降下薬で、HbA1c8%台が長く続いている患者さんや、コントロールが悪化してHbA1cが8%を超えたときに、治療強化の選択肢としてトルリシティを検討していただきたいと思います。特に、年齢が40~60歳台の比較的若い患者さんでは、合併症の抑制に向けて、HbA1c8%台で踏みとどまらず、血糖低下効果の高い薬剤で積極的に7%未満を目指すべきでしょう。しかし、働く世代の患者さんは、日常の忙しさが治療の障壁になることも少なくありません。体重増加を気にしつつも食事・運動療法を思うように実行できなかったり、日中の服薬が難しかったりなど、理由はさまざまです。
トルリシティの投与は週1回で、投与を忘れても次の投与まで3日(72時間)以上あれば投与が可能なので、薬の飲み忘れが懸念される患者さんでもアドヒアランスの向上が期待できます。また、専用ペン「アテオス」は針の取り付けや薬剤の混和、空打ちが不要で、3ステップの簡単な操作で投与できます。実際、自己注射の経験がない2型糖尿病患者さんを対象とした調査で、トルリシティのプロファイルは受け入れが良好であることが示唆されています6)

ADA/EASDのポジションステートメントでは、約3ヵ月間でHbA1cが目標未達の場合は治療強化が勧められています。しかし、英国の大規模なコホート研究では、HbA1cが8%以上の患者さんに2剤目から3剤目の経口血糖降下薬が追加されるまで、3剤目の経口血糖降下薬からインスリン導入までに、それぞれ6年を超える期間(中央値)がかかっていることが明らかにされ、必ずしも適切なタイミングで治療強化がなされていない現実が浮き彫りにされました7)
一方、米国の研究では、HbA1cが7%を超えてから早期(6ヵ月以内)に治療強化を行った患者さんでは、治療強化が遅れた患者さんより、5年間の血糖コントロールが有意に良好(p=0.0060、Cox回帰モデル)であることが報告されています8)
トルリシティという新たな一手で、早期のHbA1c7%未満達成を目指していただきたいと思います。

  • 1) Inzucchi SE, et al. Diabetes Care. 2015; 38: 140
  • 2) Araki E, et al. Diabetes Obes Metab. 2015; 17: 994 (本試験はイーライリリー社の支援により行われました
  • 3) 社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDY試験)、承認時評価資料
  • 4) Emoto M, et al. Endocr J. 2015; 62: 1101 (本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
  • 5) 社内資料:日本人2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(GBDQ試験)、承認時評価資料
  • 6) Gelhorn HL, et al. Patient Prefer Adherence. 2016; 10: 1337 (本試験はイーライリリー社の支援により行われました)
  • 7) Pantalone KM, et al. Diabetes Care. 2016; 39: 1527
  • 8) Khunti K, et al. Diabetes Care. 2013; 36: 3411